烏天狗のいる日常を見守るという癒し

烏天狗は街のヒーロー。
先祖代々街を守り、人々と共に暮らしている。

主人公の莉子は、そんな烏天狗の三月と幼馴染だ。
人とは違った大いなる力や、自らの羽を使って飛ぶことだってできる烏天狗。それなのに三月は引っ込み思案で自己主張が弱い。そんな三月を少し物足りないと思いながらも、惹かれていく莉子。

何百年と営まれてきた日常の一つなのかもしれない莉子と三月の物語は、小さなすれ違いや大きなすれ違いがありながらも、ゆっくりと穏やかに紡がれていく。
そんな二人を、読者はまるで神様のような目線で見守ることになる。神様のようではあるけれど、二人の物語に手を出を差し伸べることはできない。でも、安心して欲しい。この二人は私たちが心配しなくても自分の力で立ち、試練に立ち向かうことができるから。

だから、ただホッコリと物語全体に穏やかに流れる時間とともに二人を見守っていればいい。私たちの暮らす日常とほとんど変わらないのに、不思議な存在、烏天狗がいるだけでどこか幻想的に思えて、いじらしいとも思える莉子と三月の物語の楽しみ方は、それが一番だと私は思う。

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