女友達にふざけて催眠術をかけられ、目が覚めたら完全に一線を越えた関係になってたんだが

でずな

第1話 催眠術



「なぬ〜!? 今の技は反則だ!」


 俺の家の中に朝比奈桜あさひなさくらの大声が響き渡った。

 サラサラとした黒い肩につくかつかないかいう長さの髪の毛が、体を動かした反動で、隣りにいる俺の顔に当たった。

 ふんわりと爽やかな香水の香りが鼻の周りを漂う。

 

「いいかね桜くん。今の技はハメ技というものであって、実際のゲームの大会でもよく用いられてるから反則ではないのだよ」


「うるさいっ! 來也らいやめ。どうせまた私のことをこてんぱんに負かすためにコソ練してたんでしょ!」


「あいにくと、俺は勝利のためならばどんなことでもするんだよね」


「くぅ〜。次こそは私が勝つ! ほらほら。早く準備OK押して!」


「ごめんごめん。桜の楽しそうな顔を見るのに夢中になっちゃってて……」


「全然楽しくないわい! 悔しいんだよ!」


 桜が気合を入れ直すため制服のスカートを捲し上げた時、真っ白な逆三角形の下着が見えた。

 

 普通の高校生なら女の子の下着のせいで頭がいっぱいになり手元の操作が鈍り、負けてしまうが俺はそうはならなかった。


 桜とはもう長い付き合いで学校の放課後に俺の家にきてゲームをするような仲。そのせいで女の子として見ることがなくなり、女友達として見るように、接するようになった。

 なので普通の男子高校生が雄叫びを上げるような女の子の下着が見えたところで、なんと思わない。


「はいまた俺の勝ちぃ〜」


「くっそぉー!! コソ練しなければ絶対私が勝ってたのに……」


「桜。そういえば、この前一切コソ練してこなかった日も俺にズタボロに負けて同じようなこと言ってなかったっけ?」


「言ってませぇ〜んだ。……いや言ってたかも」


「すごいな……。なんで俺に一度も勝ったことないのにいつもゲーム挑んできてるの?」


「ふふ。そんなの來也と遊ぶのが楽しいからに決まってるじゃん。あ、ゲームが面白いからっていうのもあるかも」


 一瞬桜のことが女の子として見えた気がしたが、すぐさま女友達に戻った。


 桜はこうして普通に喋ってる時、たまにドキッとさせるようなことを言ってくる。俺のことをよくわかってるのか、本心からの言葉なのかわからないが言われたその日は忘れることができない。まぁ翌日になったら女友達なんだからと思い、すぐ忘れてしまうのだが。


「ねぇ!」

 

 少し考え事をしていたら、一人でゲームの練習をしていたはずの桜が突然視界に入ってきた。


 いつのまにかテレビが消えている。

 

「なに?」


「さっき來也に言われて気づかされたんだけど、私って一度も來也に勝ったことないじゃん?」


「……人望の広さには負けてると思うんだけど」


「そんなの今はおいといて! 私実は、來也に唯一勝つことができる自信があるものがあるの。よかったらそれで勝負してくれない?」


「まぁうん。どうせまた俺が勝つだろうけど、その勝負ってなに?」


「ふっふっふっ。よくぞ聞いてくれた! そう! 來也と勝負するのは催眠術!」

 

 桜は自信満々に紐でぶら下がった5円玉を前に出してきた。


 勝負と聞いて少し身構えてしまった。


 催眠術なんてそんな確証のないことで勝負するのはどうかと思うが、ここは一つ桜がこれまで俺を負かそうと頑張って練習して来たということを踏まえて、受け入れることにした。


「桜がそれで勝てる自信があるのなら、もう全力でやっちゃっていいよ」


「本当だね? 全力でやっちゃっていいんだね?」


「どんと来い」


 俺の記憶はここで――プツンと、まるでテレビのコンセントを間違えて抜いてしまったときのように突然途切れた。


 真っ暗になり、目が覚めると目の前にすぅすぅ小さく息をしながら寝ている桜の顔があった。


 なんなんだ?

 

 肌に直接布団がかけられている。

 俺と桜は――裸だ。


「んぅ……」

  

 布団を動かしすぎてしまったのか、隣で寝ていた桜を起こしてしまった。


 何があったのかわからないが、催眠術をかけて俺になにかした張本人にこの状況を説明してもらう絶好のチャンスだ。

 

 俺はそう思い、聞こうとしたのだが――


「えへへ。初めてを奪ったんだから、ちゃんと責任取ってね」


 頬を赤くさせ、満更でもない顔をしながら言ってきた桜の言葉に、体が氷になってしまったのかと疑うほど固まってしまった。



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