第11話 恋する乙女の電話(暴露)



 今更すぎるけど、私と來也は付き合っているのだろうか?


 この前、來也が私の良いところを淡々と語ってくれていたので好意があるのかもしれないと思った。でも、今更だけど私たちの関係はちゃんと告白をしたわけじゃないし告白されたわけでもない。考えてみればただちょっとしたきっかけで致して、その流れで親密な関係になっているだけなのかもしれない。


 もともと私が來也のことが好きで、その気持ちが暴走してしまっていここまで来ているけど果たして今のままでいいのだろうか?

 いや悪いことなんてない。

 でも、明確な関係が定まっていないと心がソワソワして本当に來也が私のことを好きでいてくれているのか不安になっちゃう。


「付き合ってるわけじゃないから不安だって思うのは私だけなのかな……」


 ため息と同時にベッドに倒れ込むように横になった。

 

 そういえば私が催眠術にかけられていた時、來也は一体どんなことをしていたんだろう?

 催眠術が解かとれたき、かけられる前と特に変わった様子はなかった。

 ……そんな重要なことじゃなかったのかな。


「う〜ん……」


 さっきから勝手な想像しかできてなくて、不安が積み重なるばかり。

 この際、電話で來也に直接聞いてみるという選択肢もあるけど……。スマホをつけてみると時刻は23時52分。もうすぐ0時を迎えようとしている。


 こんな時間に電話なんてされたら迷惑に思われてしまうかもしれない。

 というか、明日も学校なのにこんな時間まで起きているのだろうか?


「もう知らない!」


 考えていても仕方ないので一か八か電話をかけてみた。


 電話をするときはいつも電話さ來也のほうからしてきていたので、意私から電話するのは初めて。なんか緊張しちゃう。

 

 プルルプルルと鳴る呼び出し音より、私の心臓の鼓動が上回ったその時だった――


「どした?」


 少し眠そうな來也の声がスマホから聞こえてきた。 


 慌てて体を起こし、スマホを両手に持って背筋をピーンと伸ばす。


「あ、あの、こんばんわ」


「こんばんわ……? いきなり挨拶なんて礼儀正しいね」


「いやちょっとテンパっちゃって」


「あはは。テンパるってなにそれ。ただ電話してるだけなんだけど。……あぁ、もしかして深夜だから?」


「それもある」


「ちょっとその気持ちわかるかも。深夜に人に電話かけるのって、変なやつだと思われないかな……って思っちゃったりして勇気いるもんね。ちなみに、俺は深夜に電話をかけられても思わないよ」


 來也の言葉に心が楽になった。


 もしかして私の心覗き見てるの?


「あの、電話をかけたのは、ちょっと聞きたいことがあったからなんですけども」


「はいはい。ん? 聞きたいこと?」


「私たちってどういう関係なのかなって」

  

 スマホから來也の声が聞こえなくなった。

 いや黙り込んでいる。

 

 同じことを思ってたのは私だけじゃなかったらしい。なんか嬉しい。

 

「桜」


 スマホを両手で持ち続けるのが面倒になり、ベットにおいてゴロゴロしていると、突然來也が私の名前を呼んできた。

 ちょうどスマホの音を出す部分が耳元にあたって心臓が飛び上がった。


「な、に?」

 

 もぅ心臓に悪い……。


「ずっといつか言おうと思ってたことがあるんだけど」


 來也の声色がいつになく真剣。 


「桜はこれを聞いてショックに思うかもしれないけど、いいかな?」


「うん。今覚悟を決めたからドンとこい!」


 正直なにを言われるのかわからない。

 だからどんなことを言われても余裕だと思っていたが――


「俺、桜に催眠術をかけられて目覚めたのってお互い裸になってた時なんだよね」


 予想打にしないことを告げられ、息が止まりそうになった。

 けど、私は冷静だった。無意識にそんな気がしていたのかな。 


 多分來也が言ってることは、催眠術のせいで初めての時を覚えていないということ。

 悲しいけどそう理解すると案外すんなりと頭が整理できた。


「そ、っか」


「もっと早く言い出せなくてごめん。……もし催眠術中になにか俺が言っていたのなら、それは多分本心だけど俺自身が言ったことじゃないんだ。本当にごめん」


「……よかった。始まりは覚えてなかったとしても來也は私のこと、嫌いになったわけじゃないんでしょ?」


「あぁ」


 肯定する言葉が聞けてホッと息をついて安心した。


「じゃあ結局、私たちの関係ってどんな形なんだろ?」


「そうだな。一つ聞きたいんだが、俺が催眠術中になんかそういった類のことを言った?」


「言ってないよ。本当、ここまで流れできたみたいな感じだと思う」


「じゃあ関係ってやつは……正式に付き合ってるわけじゃないけど、もうお互い心の中じゃとっくに恋人だと思ってるって感じかな」


「そっか。來也、今私に告白して正式に付き合わない?」


「えぇ? 俺から告白するの?」


「もちろん。せっかくだからこの前來也にした質問でもしてあげる?」


「……申し訳ないんだけど、その質問ってなんのこと?」


「覚えてないの? あ、そういえばあれって催眠術中のことだった」


「えっ。催眠術中の俺にどんな質問したのさ?」


「んふふ。秘密」


「桜のいじわる」


「ま、今度來也が私に本気で告白してくれるってなった時同じ質問をしてあげる」


「結局俺が告白するのか……」


「気長に待ってるね。じゃあおやすみなさい。また明日の……いや、今日の学校で」


「おう。おやすみ」


 

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