第8話
「お前クビになりたいのかっ?」
「あの男、本当に教師かよ」
バンと激しくドアを閉めて、ロイは運転席へのけぞる。
「その意見には大いに賛成だが、俺はお前にもまったく同じ言葉を送りたいよ」
「俺は教師じゃねえ」
「捜査官だろ! この仕事は公式じゃない。上に苦情が入れば謹慎は免れない」
カインの勢いに対してロイはのんびりとした口調を保ったままぼやいた。
「お前のな。俺じゃない。俺はお前の妄想に付き合ってやってるだけだ」
「ウィルにもその理屈が通ると思うか?」
二人の上司の名を出すと、ロイはむっと顔を曇らせた。
「とっとと結論を出したほうが良さそうだな」
カインは同意に大きく頷くと、深く息を吐きシートに体を預けた。一度情報を整理しよう。
テッドが自殺して間もなく、立て続けに不可解な事件が起きた。
精神的な干渉を受けたと考えられるが、証拠はなく通報もされていない。被害者たちは何かを隠しているようだった。
二つの事件――あの教師が言うには事故――が通報されなかったのはこのためか?
テッドがすぐに埋葬されたのもこの辺りと関連があるのか。
「事件の隠蔽には教師が関わってると思うか?」
ロイは低く唸る。
「どっちとも取れるがな。あの年代なら子ども同士で大人に話したくないことがあって、口を閉ざしてる可能性は十分あるだろう」
「彼女らは何かに怯えている様子だった。あれは秘密がばれることへの恐怖か、それとも能力者に対するものか」
「教師の反応も気になるが、学校が事件でないと判断した後に探られるのが不愉快なだけかもしれねえし……これだけじゃ何とも言えないな」
彼の言うとおり、まだ断片的で情報が少ない。
「リアムに聞き込みたいところだが……」
隣からの鋭い視線で、声に出していたと気づいた。
「まだ何も言ってないだろ」
「疑ってるだろうが」
「彼がやったとは言ってない。それに万が一、彼が何かしてしまったのなら助けないと」
「リアムが能力者なんて証拠ないだろ」
「だからそれも含めて確かめるんだよ」
いつになく頑固なロイに、カインは顔を顰めた。いずれにせよキーを握っているのはロイだ。車のという意味で。カインには彼が動くのを待つほかない。
いや、能力を使えば無理やりに動かすことも可能なのだが。
車内には重い沈黙が淀んでいたが、十分後、ついにロイがキーを回した。無言の横顔には険しい表情が刻まれていた。
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