第1話

 5回目に、まったく反応しない自動販売機を前にしてロイは舌打ちした。諦め切れずにガラス窓を叩いたり揺らしたりするがうんともすんとも言わない。まったくふざけているのか?


「それ、壊れてるよ」


 しきりに悪態をつきながらガチャガチャとせわしなくボタンを連打していると、背後からすました声が飛んできた。振り返ると陰気な顔をした十歳前後の少年が彼を見上げていた。

「こんなところで何してる?」

「ここ、僕の家だから。それの管理は親がしてる」

「マジかよ。俺の200ドル札が飲まれたままなんだが?」

「自販機に200ドル?」

 小ばかにするように鼻で笑われる。

「残念だけど諦めるしかないね」


 にべもなく子どもからいわれ、ロイは低く唸る。

「知ってんなら先に教えてくれてもよかったんじゃないか。俺が来る前からいただろ?」

 少年はぴくっと頬を震わせたが、すぐにニヤッと笑う。

「それじゃ面白くないじゃん」

「クソガキ……」

 だがロイは溜め息しただけで踵を返した。


「次来る奴には忠告してやれよ、坊や」

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