八話 二日目
ルーベンス・ミリタニア・ルミタスは客間で怒りに満ちていた。
シルバニア帝国の皇太子ルシウス・アウロ・ジルバニアと自分の恋人である美里がソファーでルシウスの膝の上に横向きで座りイチャイチャしているのだ。
――二日前――
断罪が終わりロドリウス国王が執務室で書類を片付けていた。金髪の癖のある髪を後ろに流しルミタス家の後継者の印であるエメラルド色をした瞳の宝石眼が憂いに満ちていて、幾多の魔物との戦いを乗り越えた強靭な身体の威風堂々した姿が影を潜めていた。
息子のルーベンスから断罪の話を聞いていたが、まさか呪いをかけるとは思わなかったのだ。
魔素が噴き出し魔獣が頻繁に出没する森を有するルミタス王国にとっては、聖力が歴代聖女の中でも突出しているヴィヴィアンを失う訳には行かなかった。
だから10日後に死ぬなどあってはならないのだ。
ロドリウス国王が頭を悩ましていると通信魔道具にジルバニア帝国アレキサンドル・パウロ・ジルバニア皇帝から通信が来た。
――一日前――
ジルバニア帝国から使者が来るとロドリウスに呼ばれたルーベンスと美里は城の地下にある転移門が置かれている一室に来ていた。
転移門は門では無く魔法陣で魔力を込めると発動する仕組みだ。そして、この部屋には王家の血筋の者しか入室出来ないのだ。
美里は少しふくよかな体型なのだが、サイズが小さいのではないと思う程の身体のラインが出過ぎている真っ赤な胸元が開いているマーメイドドレスを着ていた。乳房の先端は隠れているが溢れ落ちそうに露わにし、ルーベンスの腕に胸を押しつけながら自分の腕を絡めて谷間を強調している。そんな姿を城に勤めている者達は「娼婦だ」と、言っている。
半年前に美里が異世界から来てから半月もしない内にルーベンスと恋人になり、次第に断罪の時にいたアーノルド、ミハイルとも城に用意された美里の部屋で身体を重ね合わせていた。
婚約者のいるアーノルドとミハイルは婚約破棄して美里の側にいたいと言い出していて、婚約者が「政略結婚なのだから両家で話し合いが必要だ」と、言っても「私がいけないの」と、美里に泣かれて悪者にされているのだ?
美里に付いている三人のメイド以外は「聖女ヴィヴィアンが王太子妃に相応しい」と、話しているが、彼らは気にもせずに色欲に溺れている。
しかし、この部屋に通された事により国王が王太子妃として認めたのだと、美里は自分を蔑んだ者達を虐げてやろうと嫌な笑みを浮かべた。
転移門の魔法陣が発動しラリッシュと共にユリシーズ・リル・ジルバニア第二皇子、宰相補佐のキリア・ニルバレット伯爵令嬢と魔法騎士のトレバス・リドバニア公爵が現れた。
「久しいなユリシーズ王子、わざわざすまぬな」
「ロドリウス国王陛下、ご無沙汰しており…」
「ユリシーズ様!!お会いしたかったです!!」
ユリシーズの挨拶を遮り美里はユリシーズに抱きついた。
「美里!!何をしている!!」
「これは私の世界での挨拶です!あぁ、やっぱりユリシーズ様もカッコいい!!」
「……君は誰かな?」
「私は神の預言者の綾瀬美里です!ところでユリシーズ様、ルシウス様は一緒ではないのですか?」
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