七話 二日目
七話 二日目
ラリッシュ・ドリテラとウィリアム・ウェスティンは礼拝堂の前でトーマス院長から検査結果を聞いていた。
「ヴィヴィアン様のお身体には問題はありませんでした」
「問題はないだと……」
トーマスの言葉にウィリアムは検査報告書を一字一句逃さず見た。
報告書は全ての検査が異常無しと記されていた。
「はい、ヴィヴィアン様の
「
「ええ、こちらをご覧下さい」
トーマスが胸部のレントゲン写真の様な紙をウィリアムに渡した。身体を黒と白の細い綺麗な線が流れているが、一箇所だけ異様な部分があった。心臓の部分が何も無いかのような真っ黒で、深い底の無い穴のように見えた。
「こ、これは……、いったい……?」
「この写真は魔力回路を写した物です。聖力と魔力が綺麗に絡み合い身体を循環しています。ただ、心臓の部品が何かに隠されているみたいに真っ黒で……、もしかすると、ヴィヴィアン様の魂に呪いがかけられているのかも知れません……」
「魂だと!?馬鹿を言うな!!」
ラリッシュは怒りで顔を真っ赤にしながらトーマスに叫んだ。
「……きっと、教皇様も同じご意見かと」
「そんな!それじゃ、ヴィアが……」
この世界では、魂にかけられた呪いを解く方法は無かった。呪われた者は身体が朽ちていく恐怖に怯えながら死を待つしかなく、それに耐えられず自害しようとも呪いに守られて死ねない。そして、絶望に苛まれ精神が崩壊してしまいそうになるが、また、呪いに守られて廃人になる事すら出来ない。
死ぬ事も出来ず気が狂う事も出来ずに、呪いで死ぬのを待つしかないのだ。
「しかし、本来なら魂の呪いは魔力回路にも影響を及ぼし破壊していきますが、ヴィヴィアン様の魔力回路はとても綺麗なのです」
ウィリアムは少し考え込むと、ヴィヴィアンが解呪魔法ディスエンチャントを発動させたのを思い出した。
(もしや、ヴィアの解呪が効いていたのか?)
あの時にヴィヴィアンは身体の呪いを完璧に解呪していたのだ。口元が少し良くなっただけだったので解呪出来なかったと思っていたが、実は解呪出来ていたのだ。
「たしか、ヴィアはディスエンチャントを自分にかけていた……」
「本当ですか!?ヴィヴィアン様の力なら絶対に解呪出来てるはずです!!」
「ヴィアの呪いは…」
ラリッシュがトーマスに詰め寄ると礼拝堂から禍々しい呪いの気配が漂いウィリアムが扉を勢いよく開けると、黒い煙が充満していた。
「ウンディーネ!浄化してくれ!」
ウィリアムに呼び出された水の精霊ウンディーネは礼拝堂を浄化すると、ヴィヴィアンが寝ている台の周りに教皇と枢機卿が倒れていた。
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