公爵令嬢 醜女の姿になり十日後に死ぬ呪いをうける

いちとご

エピローグ


「あんな醜い化物が本当に聖女なのか?」


そんな言葉が聞こえるとヴィヴィアン・ウェスティンは(またか…)と、心の中でつぷやいた。


この日はルミタス王国と魔界の境界である魔の森に発生した瘴気の沼から溢れ出てくる魔獣の討伐に、第三討伐隊騎士団と所属する第三討伐隊魔法師団と共にヴィヴィアンは魔の森に来ていた。


後方で負傷者に回復魔法をかけていると、負傷した騎士団の団員がヴィヴィアンを指差して嘲笑っていた。

 

「お前知らないのか?あれがだよ!」

「ああ!あの嫉妬にかられ殿下の恋人を殺そうとした聖女か!」

「絶世の美女だと言われてたが、今じゃたんなる化物だからな!」

「あんな腫れ上がってこぶみたいな目でちゃんと見えてるんだか!」

「ほんとにな!それに潰れた鼻に歪んだ口で、ボッサボサで汚い黒い髪してて化物にしか見えないな!」


(こんなに元気ならヒールはいらないのでは?)

と、ヴィヴィアンは思いながらも嘲笑われってくる騎士達に回復魔法のヒールをかけていく。

しかし、傷が癒えた騎士達はお礼の言葉一つなく魔獣の元に向かって行くのだ。酷い騎士だとヴィヴィアンを突き飛ばしたり、「化物が」と、暴言を吐く騎士までいる。


けれど、そんな騎士達だけではなかった。


元のヴィヴィアンを知っていて何度も討伐部隊で一緒になっている騎士達はヴィヴィアンに優しくしてくれる人達だ。それに、魔法師団の団員達もヴィヴィアンの飛び抜けた力を知っているので、嘲笑ったり蔑む騎士達がいる事に憤りを覚えていた。


特に第三魔法師団に所属するミリア・アーゴットはヴィヴィアンよりも5つ年上の21歳だが、ヴィヴィアンに憧れている。いや、憧れよりは崇拝に近いだろう。


彼女の性格と同じ燃えるような真っ赤な髪で立派な縦ロールの派手な髪だったが、5年前に魔法師団に入団して初めての魔獣討伐の時に、小さいながらも綺麗な銀髪をサラサラと靡かせながら数多の魔法を駆使して魔獣を倒しながら負傷者を癒すヴィヴィアンの姿に、まるで天使ようだと憧れたのだ。


そして、魔法を駆使してヴィヴィアンと同じく銀髪のサラサラストレートの髪にした。ヴィヴィアンには「魔法の使い方が間違っているのでは?」と、疑問を投げかけられたが「間違ってません!」と、言い切り今に至る。


「なんて失礼な奴らなの!ヴィヴィアン様にヒールで治してもらったのに暴言を吐くなんて!」


「落ち着いてミリア、わたくしは気にしてません」


「ヴィヴィアン様は優し過ぎるんです!」


「……そんな事ないわ、本当に優しかったら呪いなんて…」


「……もう、五日目になるのですね……」


「そうね、後五日しかないのね……」


ヴィヴィアンは俯きながら、泥で汚れた白い聖女の制服のワンピースのスカートを両手で握りしめた。

腫れ上がった瞼で瞳は見えないが泣きそうな表情に感じ、ミリヤはヴィヴィアンの肩に右腕を回して抱きしめた。


「真実の愛は見つかりそう……?」


「……いいえ、真実の愛なんて…、無理よ……」

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