十話 二日目

十話 二日目

ヴィヴィアンは目を覚ますと、銀糸の刺繍が施された白いレースのカーテンが月明かりに照らされて、キラキラと煌めいていた。毎晩その煌めきを見ながら眠りに就くのだが、いつもと違っていたのは隣にラリッシュが寝ていたのだ。


「ッッ!!!!」


声にならない悲鳴を上げると、ラリッシュが目を覚まして目と目が合ってしい、ヴィヴィアンは恥ずかしくて顔を真っ赤にしながら慌ててベッドから出ようとしたが、ラリッシュにがっしり腰に腕を回されて捕まってしまった。


「そんなに慌てたら、ベッドから落ちちゃうよ?」


「なっ!なっ!なんで!」


「ヴィアが目を覚さないから、心配で一緒にいたんだよ」


「だ、だからって!どっ!どう!!!!」


「なになに〜、同衾がなに〜?」


ラリッシュは腕を回したまま身体を動かして、ヴィヴィアンの太ももの上に頭を置くと、ニヤニヤと笑いながら嬉しそうにヴィヴィアンを見つめる。


「ッッ!!ラリーは破廉恥だ!」


羞恥心で真っ赤になった顔を両手で隠している姿のヴィヴィアンが可愛いくて、ラリッシュは身体を起こしてギュッと抱きしめた。


あ〜!なんでこんなに可愛いいんだろう!見た目が変わっても可愛いヴィヴィアンは変わってない!


俺をラリーって呼ぶ声も可愛いままだし、恥ずかしがってる姿なんて!可愛い過ぎて死んでしまう!


しかも、同衾だなんて!婚約してた時も一緒に寝ても平気だったのに、やっと俺を男として見てくれたのかな?


ラリッシュは嬉しくて「ヴィア大好き」と、言うと首筋に唇を落とした。


「なっ!ななっ!何するのよ!!!!」


首筋にキスをされてビックリしたヴィヴィアンは、風魔法でラリッシュを吹き飛ばしてしまった。


だっ!大好きって!ラリッシュがわたくしの事を大好きって!しかも、キッ!キッスした!!


小さい頃から一緒に育った2つ上のラリッシュの事を婚約者だけれども兄の様に思っていて、毎日一緒に遊んだり魔法の勉強をしていた。けれど、ルーベンスと婚約してから会える機会が少なくなり寂しく思っていたのだ。

 

この婚約に反対していたルーベンスは、無理矢理に婚約させられたのをヴィヴィアンのせいにして責め立てられて心が傷付き疲れ果ててしまった。


そんな傷付いていた時に、部隊は違くても目が合うとラリッシュが見せてくれる笑顔に、心が温かくなるのを感じていた。


ラリッシュが帝国に行く前に安全の祈祷をして欲しいと久し振りに握られた手は、前とは違く大きくゴツゴツした男の手で、背格好もガリガリでヴィヴィアンより少し高い位だったのに、バランス良く筋肉がついた身体に、見上げる程の長身で男らしい表情を見せるラリッシュに、ドキンと、心が跳ねたのだ。


それに、醜くなる呪いをかけられても変わらずにいてくれるのがとても嬉しくて、10日後に死んでしまうけれど、それまではラリッシュとずっと一緒にいたいと思っていた。

そう思っていたラリッシュの顔が目の前にあって、一緒寝ていた事に心臓が苦しい程にドキドキし過ぎてるのに、大好きと言われて抱きしめられてキッスされて心臓が爆発してしまいそうで、思わず風魔法を使ってしまった。


「って〜!ヴィアの魔法、久々だな〜」


ベッドから吹き飛ばされて壁に直撃しながらも、嬉しそうに笑いながらベッドへ戻って来ると、腰を掛けてヴィヴィアンの頭を撫でた。


「ヴィア、検査の結果出たけど、今聞きたい?それとも……」


「今すぐ聞きたい!」


ラリッシュが言い終わる前にヴィヴィアンは答えた。


「そうか、じゃあ、の部屋に行こう」


「……


ラリッシュはいつもヴィヴィアンの父親を呼ぶ時は「閣下」と呼んでいたのに、「お義父さん」と呼んだ事を違和感を覚えた。


「あっ!俺、ヴィアの婚約者になったから」


「えっ?なに?婚約……」


戸惑うヴィヴィアンをよそに横抱きで抱き上げて、頬っぺたにキスをしてラリッシュは頬を赤らめ満面の笑みで言った。


「俺、ヴィヴィアン以外と結婚しないから」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

公爵令嬢 醜女の姿になり十日後に死ぬ呪いをうける いちとご @ripoff

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ