人間関係の不信感が最大のミステリーになる良作
- ★★★ Excellent!!!
最初の数話の時点で、登場人物たちが信用できなくなっていきます。
この信用できないというのは、物語の構造上『この人物は嘘をついているかもしれない』と読者に思わせるような作りになっているからですね。
主人公は、SNS上に憧れている人物がいました。
しかしその憧れている人物が、ある日まるで殺されたような動画が投稿されて、実際行方不明になってしまいます。
主人公は、その人物と同じ学校に通っているため、憧れの人物を探すこと、および犯人探しに乗り出します。
ですがレビューの最初に触れたように、登場人物たちが信用できない人物として描かれているため、物語の全貌が霧に包まれたみたいに隠されています。
実際物語を読み進めていくと、やっぱりこの人物は嘘をついていたのか、事実を隠していたのか、という流れが連続して起きるようになります。
それでいて、嘘をついた人物には相応の事情があるので、必ずしも犯人に直結するわけではありませんでした。
しかもお互いに嘘をついているせいで、人間関係が縮まりそうで縮まらないため、事件の真実に近づくことが困難になっています。
そんな事件の手がかりは、SNSです。
実名でアカウントを運用している人、匿名でアカウントを運用している人、それぞれの立場が深く交わることによって、事件の真相にたどりつくことになります。
もしこの物語に、名探偵みたいな人物がいたら、きっと事件は早期解決していたんでしょう。しかし心身ともに未熟な人物ばかり登場するので、犯人が遠ざかってしまうのです。
逆に考えれば、未熟ゆえの危うい情報収集こそが、この物語の醍醐味です。
このレビューを読んだみなさんも、ハラハラしながら物語を読み進めていくといいと思いますよ。