第3話 困ってる人を発見!

『ここの格闘ゲーコーナーの台の種類が多いんだぜ』


「ん?」


どこからか知ってるような声が聞こえてきた。声のほうを振り返ると、宅間とその取り巻きがゲーセンに遊びに来ていた。どうやら大事な用事は友達とゲーセンで遊ぶ事の様だ。一瞬目が合ったがすぐに目を逸らされた、バレたと思ったが単に自分達の様な不良の見た目にビビってるだけだった。ここで逃げても男としてのプライドがあるのかそのまま台の前の椅子に座る。


「てかよ、不動の奴調子に乗ってないか?」


宅間の取り巻きの一人が黒華の話題を出す。黒華の名前に反応をする建人達、黒華は面倒なことにならないようにいのるだけだった。


「あの、クソ陰キャが、委員長を盾にしやがって、明日から裏であいつの立場を分らせてやるか?」


「ハハハ!いいね、そもそも2組に相応しくないし、不登校にさせるまでいじめるか?」


「いい考えだ!その間あいつを奴隷の様にパシれば楽しいな。あいつ、確か金はあるよな?」


「お?ATMっすか!今月は金欠でやばかったすからね、ちょうどいいっすね。どうせゲームにしか金を使ってないから、代わりに俺達が活用しないと」


「いじめすぎて自殺したら、クソオモロイわ」


宅間のセリフに黒華はカチンっと来て立ち上がろうとした途端、建人が怒った顔で灰皿を宅間達に投げた。


「ごちゃごちゃうるせぇんだよ」


「お、おい。建人落ち着けよ」


キレた建人を止める黒華。清史郎はゆっくりと宅間達の方に近づく。


「あーら、さっきは面白そうな話をしてたじゃない。私達も混ぜてくれるかしら?もちろん、いじめの対象はお前らだけどな」


「ひぃ、ひぃぃ!」


あんな不審者みたいな格好に怖い顔で脅されたら誰だってビビる。宅間達はみっともない姿で逃げ出してしまった。


「流石に言い過ぎだ。あいつらの顔はちゃんと覚えたからな。次見かけたら容赦しない」


真斗はプンスカプンスカと怒って居た。自分の為にここまで怒ってくれた事に友達には恵まれてるんだなった実感する。そのあと傑の奢りでマックを食べて帰ろうとする。


「はぁ〜」


あんな騒がしい中、家に帰れば静かな空間と思うと少し寂しい気持ちになる。路地裏に向かい一服を済ませる。


「や、辞めてください!」


路地裏の少し奥から女の声がした、少し気になって覗いてみたら数人の男達に囲まれている1人の女性が居た。その女性は見覚えがある女性だった。


「は、離して下さい!困ります」


「おいおい、嬢ちゃん。この後暇っしょ?俺らと楽しい事しない?」


「い、嫌です。帰らせて下さい」


千夏だった。何故こんな路地裏にいるのかは気になるが、こんな所に美少女が通ればガラの悪い奴らが見逃す訳がない。真面目なクラスメイトが不幸な目に遭うのは後味が悪く、黒華は千夏の手首を掴んでいる男の顔に目掛けて蹴り飛ばす。


「ガハッ!」


「おい!なんだお前は!」


他3人はいきなり仲間が蹴られた事に驚くが、すぐに遅いかかる。3人のパンチを避けながら顔にジャブを入れる。


「ごふっ」

「ガッ!」

「あひゅッ!」


「スーー、はぁ〜〜」


タバコの煙を吸って吐く。困っている千夏に声をかけたのだった。


「大丈夫か?女の子1人がこんな路地裏に通っちゃダメだぞ?」


「...」


「あの〜」


何故か自分の顔を見つめる千夏に首を傾げる。


「...ふ、不動君?」


「え?!」


こんな見た目でバレる訳ないと近づいたのに、速攻でバレた事に黒華はタバコを背中に隠して慌てた様子で否定をする。


「だ、誰?俺は木村だよ?」


適当な苗字を言って誤魔化すが、千夏は首を横に振る。


「ううん、わかります。貴方不動君ですよね?確かに見た目は学校と全然違いますが、声が一緒です」


「...似てるだけじゃないの?」


「いえ、分かります!貴方は不動君ですよね?」


「...はい」


ここまで言われるのなら自白するしかなかった。

黒華は少し困った様な表情になる。


「まさか、驚きました。学校では大人しそうな人だと思いましたが、裏ではこんな一面があるのですね...」


千夏は隠しているタバコに目をやる。

こんな真面目な委員長の千夏が校則違反ってより犯罪行為を見逃す訳がない。


「...いや、こ、これは」


「大丈夫です。先生には報告しません。助けてくれた恩人なので、私は仇で返す訳には行きません。何がお礼をさせて下さい!」


「って言ってもな、別に俺はお礼をされたくて助けた訳じゃないしな。別に気にしなくてもいいぞ!うん、また学校でね!」


逃げる様に走って帰る。千夏に呼び止められる声がするが黒華には聞こえて居なかった。取り残された千夏は嬉しそうに微笑んだ。


「見つけました」









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