森を抜け町へ行く若き女商人(?)と凛々しき騎士のおはなし、なのだけど。

国家を巻き込み商業ギルドを震撼させる罠がそこにはあった。
この異色のファンタジーの戦場は政と商の盤上、商売上の何気ない一言が呪文のように現実に甚大な影響を与える世界。
可愛い顔をした妙齢の女性リツは、しかしそんな麗らかな外見を他所に、大きな商取引に出る。
命を狙われるほどのひりついた駆け引き。交わされる不穏な言葉。
そんな彼女に付き添う騎士タルワール。その腕のほどは、読み進めて行けば自然と分かります。
徐々に気持ちが通い、認め合い、なのに互いに何かを隠している、そんな緊張感が漂う旅路。
読み進めるうちに引っかかりを感じていた部分から大きな舞台裏の世界が垣間見え、やがて読者の想定を上回る大きな筋書きが開示され、引きずり込まれるでしょう。

森を通って、木材を売りに行きます!本作はその3日間の商いと陰謀の物語。
旅路で手料理を振る舞ったり、相手の言動に心をときめかしたり、意地をはってみたり、淡い恋心が生まれたり。
ミステリーのような伏線に満ちたプロット、難解な用語や概念には作者様の丁寧な説明がついて賢くなれて。
普段は縁遠い中東ベースの料理や美術品の描写が読者を楽しませてくれます。

知的な商の駆け引きと、純な少女の恋模様が同居する本作、興味をもたれたら、手に取って見てはいかがでしょう?

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