もし地球上の全員が同じ一日を繰り返し始めたら……?

ループものにおける主人公の最大の武器は自分だけが記憶を持ち越せて何度もやり直せること。しかし個人ではなく、それ以外の全人類もループし始めた場合、世界はどうなってしまうのか? そんな全人類が同じ一日を繰り返すようになった世界を描いたのが本作品だ。

本作は連作短編形式になっており、話によって主人公が交代する。娘を殺され犯人に復讐を誓う親。襲われないように自分たちで自衛する女子高生。事故からの復帰を目指す格闘家。一人で毎日図書館に通う女性。立場の異なるこの4名の視点から物語は紡がれる。

一人一人のエピソードが面白く――復讐を達成しても、殺された者がループによって翌日に甦るなら殺す意味はあるのか?――それだけでも読み応えがあるのだが、それと同時に全人類がループをしている世界という異常な状況をしっかりシミュレーションしているのが面白い。たとえば、世界がループする瞬間に起きていた人間と寝ていた人間では取れる行動の幅が大きく違うのではないか? どんな大怪我をしても翌日(?)にリセットされるなら格闘技のルールも変わって来るのではないか? などなど異常な世界で起こりうる変化をしっかり想定し、それが物語に自然と組み込まれている。

また各話ごとに意外なツイストが仕込まれており、興味を持った方は是非一話だけでも読んでみてほしい。


(「やり直せたら上手くいく!? ループ小説」4選/文=柿崎 憲)

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