その本は現実に侵食してくる――ジュブナイルホラー百合

TwitterのRT企画からお邪魔いたします。

主人公、日色雪菜は少し引っ込み思案な文学少女。
ある日彼女は読んでいる物語に出てきた異世界、『裏図書館』に辿り着いてしまいます。
そこでの『入ったら最低一冊は本を借りなければならない』というルールに則り、とある勇者の冒険物語を借りたところから、このお話は始まります。
物語を読み進めていくにつれ、雪菜はそのストーリーと同じことが現実で起きていること、それが密かに憧れている少女、枝折夏海を中心に進んでいることに気づき…というお話。
二人の少女が歩み寄っていく姿が、主人公の一人称で描かれています。

百合×ホラーという、私の大好きなジャンル!
めちゃくちゃ楽しみに読み始めました。
読み終わっての感想は「めっちゃ面白かった!!」です笑
まさに王道ジュブナイルホラー百合(?)!
大好きな物語でした。

まずはメインの二人、雪菜と夏海のキャラクターがいいですね。
大人しめかと思えば意外と女は度胸!なところのある雪菜と、溌剌としつつもどこか頼りなく守ってあげたくなる危うさのある夏海。
お互いがお互いの補完をしているようで、読んでいて見守ってあげたくなる、愛しさ溢れる二人でした。
また、雪菜のあいさつを返したいのに声が出せないところや、夏海の角を立たせないように笑ってやり過ごすところは、読者にも重なるところがあるのではないでしょうか。
ぜひ思春期の女の子に読んで欲しいなと思います。
感情移入のできるメインキャラクターでした。

ストーリー展開も、短編ながらに読み応えのあるものでした!
徐々に奇妙に物語が現実を侵食していく恐怖。
ラストがなんとなく想像できる分、どうなってしまうのだろうかとハラハラしました。
物語に重なる現実の不気味さはもちろん、虫や暗闇などの恐怖を感じるアイテムの使い方など、演出もとても素晴らしかったです。
ラスト、物語の畳み方もめちゃくちゃきれいにスッキリしていて、読んでいて勉強になりました。
名前のギミックもいいですね。

最後に、気になるところを二点ほど。

名前のギミックのある都合かとは思いますが、登場人物の固有名詞にフリガナがないのが気になりました。
正直、役割分担としては読めばすぐわかるので、フリガナはふってしまってもいいのかなと思いました。
枝折(しおり)などは読めない人もいると思いますし、そこで離れてしまう読者もいるのかな、と。
私は読めない漢字があるとすぐに調べてしまうタイプで、調べているうちに一度物語はの没入感を失ってしまうことが多々あります。
せっかく読み始めてくれた読者を逃がさないような工夫は必要かなと感じました。

二点目は誤字脱字や表記揺れです。
読んでいる中でも、
夏海たっら▶夏海ったら
せざる終えない▶せざるを得ない
表記揺れ(つく/付く、夏海さん/夏海)
などがありました。
ここら辺も読者が物語から現実に引き戻されてしまうキッカケになってしまいます。
また、この作品はファンタジーも含んでいるので、より物語への没入が求められる作品かと思います。
可能な限り少ないといいなと思いました。(私も自作でよくやりますが…💦)

色々書いてしまいましたが、個人的にはとても好きなお話でした。
すてきな物語を教えてくださり、ありがとうございました。

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