友情はホラーを超えて、物語すら書き換える。

不穏なタグに読むのを一瞬躊躇してしまったのですが、食わず嫌いはいかんと思い、目次を見ました。合間に挟まれる読書ノート。この謎が、最後に明らかになります。

本の内容が現実に起こる呪いの本を手にした主人公と、その本の中の勇者や登場人物に当て嵌まった同級生。困難な勇者の旅は「いじめ」という行為になぞらえて進んでいきます。

本の登場人物に寄せたキャラクターの名前がとてもおしゃれだなと思いました。自然と物語とリンクさせるテクニックとして、私も参考にしたいくらいです。

作品の語り部は文学少女の主人公で、落ち着いた丁寧語で一定のテンションの女の子です。一人称ですが穏やかに物語に没入できました。そんな大人しい彼女が、本の勇者であるカースト上位の女子と関わることによって変わっていきます。

ホラーとありますが、その恐怖を掻き消すほどのヒューマンドラマが詰まった作品です。そして押し売りのような百合ではなく、儚い青春の中の一コマの中で少女二人が手を取り合います。神々しさすら感じました。そしてラスト。7月20日の読書ノートを見て、ゾクッとします。ぜひこの感情の揺れを楽しんでいただきたいです。

その他のおすすめレビュー

貴葵 音々子さんの他のおすすめレビュー314