誰がための「物語」

主人公の雪菜は、ひょんなことから一冊の不気味な本と出会います。

それは、中に書かれた内容が現実に起きてしまうという「呪いの本」――

しかし、本にまつわる恐ろしい噂とは裏腹に、その内容は魔王討伐の旅に出た勇者が傷つきながらも怪物と戦いつづける英雄譚でした。

いったい、この「おとぎ話」がどのような形で現実に起こりえるというのか?

すると、呪いの本を手にした雪菜の周囲では、時を同じくしてクラス内で「いじめ」が表面化しはじめます。

不幸にもその標的となってしまった雪菜たち。
次第にエスカレートする、加害生徒からの攻撃。

そしてついに――降りかかる悪意が、呪いの成就と重なったとき、おとぎ話は想像を絶する事件へと発展していきます。

本作はホラーの要素もありながら、「おとぎ話」と「現実」がどのようにリンクしていくのかを解き明かしていく秀逸なミステリーでもあります。

何と言っても雪菜の目を通して語られる「日常」と、作中作の「感想文」が交互に語られる構成の妙が技アリで、これが驚きの結末を効果的に演出しているように感じました。

おすすめです。
是非、ご一読ください。

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