その迷宮に迷い込んでしまったのは、羊か狼か……

『自分の罪を隠せ、他人の罪を暴け』
 集められた七人に突然告げられた言葉と、このクラブの真意とは——。

 主人公は愛する妹の為に殺人を犯し、ひっそりと暮らしている一人の男。
 そんな彼のもとに届いた怪しい招待状は、迷宮入りしたはずの彼の事件の真相を知っているというものだった。
 指定された日時、指定された場所へ行くと彼は山奥の屋敷へと案内され……。

 屋敷の中にはそれぞれ細部まで明確に再現された六つの"迷宮入り"事件の現場の部屋、そして事件の数より一人多い、七人の人間。
 そこは『迷宮入りクラブ』。集められた人間はその誰もが主人公含めて殺人犯。しかしそのうち一人は冤罪者だという。

 ここから各々が事件を暴き、犯人を被告として告訴し真相を暴いていく。本作品は主人公に視点で書かれているため、謎が解明されると共に退場者が出ると、徐々に範囲が狭まり押し寄せてくる謎解きのスリルにはじわじわとした恐怖が。
 ひとつひとつの事件の謎も、それだけでも楽しめるほどにしっかりとした構成で「なるほど……!」と思わず唸ってしまうものばかり。

 ラストに近づくにつれ、クラブのスローガンである『自分の罪を隠せ、他人の罪を暴け』に徐々に染まっていくような主人公の心理描写もすごいの一言。一気読み必至の面白さでした。

 殺人犯だらけの中に一人の羊。
 最後に主人公は何を選び、掴むのか。そして何を手に入れるのか。
 迷宮入りクラブとは一体——?

 探りながら、疑いながら、わずかなヒントも見逃さずに隅々まで読んでいきたくなる物語です。

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