ミステリといえば、犯人がいて探偵がいて、大抵どちらかが主人公で進みますが。こちらの作品は謎を作った側、解く側の立場を追体験できる、とんでもない代物でした。
最初の事件の内容で大抵の人が主人公と同じ感情を抱くだろうし、主人公の知っている事は読者も知っていて、主人公が知らない事は読者も知らないという同じ立場なので、すごく没入感があります。その没入感がもたらすものは……最高のスリル。
キャッチコピーにもありますが、他の参加者の罪を暴きつつ、暴かれそうな己の罪は隠すというのはこれほどまでに緊張感を伴うのかと。
ヒントを元にそれぞれの事件の真相を推理し、自分に迫るピンチを機転で切り抜ける。手に汗握る知的な攻防。
一作品で複数の事件を堪能できる点もお薦め要素です。
妹のために人を殺し息を潜めような逃亡生活を続ける主人公の若槻を含めた7人の男女が集められた山中の屋敷には、6つの迷宮入り事件の現場を忠実に再現した部屋。その中には、もちろん若槻の事件もある。
ゲームマスターがゲーム参加者に命じたのは「自分の罪を隠せ、他人の罪を暴け」
参加者7人に対して、用意された迷宮入り事件は6つ。1人は確実に無関係なわけだけど、主人公は殺人犯。つまり生き残るためには、自分の罪を誰かになすりつけなければならないわけで……。
若槻は殺人犯ではあるものの、猟奇殺人犯というわけでもサイコパスでもないのところも、見どころの一つ。
直接的な命の奪い合いはないけれども、常に崖っぷちに立たされているようなギリギリのスリルに夢中になれるデスゲーム小説。
謎の『迷宮入りクラブ』の正体まで、ぜひぜひ見届けてください。
主人公・若槻明宏は、妹を傷つけた男に復讐するために、密室を作り上げて殺害した過去を持つ。
事件は迷宮入りしたかと思われたが、あるとき若槻は、己の罪をなぜか知っている「何者か」によって、山中の屋敷に呼び出される。そこには複数の男女がいて、一人を除いて全員が「迷宮入り事件の殺人犯」だと判明する。
複数の殺人犯と、一人の一般人を集めた屋敷の主人は、若槻たちにこう告げる。
「自分の罪を隠せ、他人の罪を暴け」
殺人犯だらけの閉鎖空間で繰り広げられるスリリングな頭脳戦が楽しく、夢中で物語を追いかけていました。
殺人犯の数だけ迷宮入り事件の謎があり、それらの一つ一つに挑んでいく若槻は、不可解で恐ろしいゲームの中で、推理を冴え渡らせていきます。その一方で、否応なく己の罪と向き合わされて、かつての殺意や、妹への想いを反芻します。
謎解きの爽快感、ヒューマンドラマの切なさ、加速していく推理バトルの疾走感、全てここにあります。ぜひ、異質なゲームが繰り広げられている屋敷の扉を開いて、隠された真実を見つけてください。おすすめです!
次どうなっちゃうの!?とヒヤヒヤハラハラなこちらの作品。
主人公の若槻はとあることをきっかけに殺人者となり、逃亡中にとある場所へ誘われます。
そこは同じく殺人を犯した男女6人がおり、そこで迷宮入りとなっているお互いの罪を暴いて、裁くというゲームをマスターという人物から持ち掛けられます。
逃げられらない男女たちは、そのゲームを様々な情報を元に解き、それぞれから段々と暴かれる罪……。そしていなくなる人々……。
そんなミステリーと興奮、スリリングが味わえる、読者もまるでゲームの中にいるような緊張感が味わえる作品となっています。
特に後半は、「どうなるの!?」といったハラハラが増々味わえ、次々に読み進めたくなる構成になっています。
そんなスリリングの中で、色んな謎解きもふんだんに盛り込まれ、本格ミステリー好きな読者さまにもかなり楽しめる内容となっています。
そのような中で、様々な謎を残したまま話が進んでいくのですが、ラストで暴かれるこの「迷宮入りクラブ」の目的に、そうきたか!!と驚かされます。
時折、ホラー的要素も差し込まれ、この怪しい雰囲気が漂うクラブを更に盛り上げてくれます。
主人公、若槻の心理描写にも注目で、彼の人間らしい部分が時折垣間見えるのも素晴らしかったです。
ハラハラドキドキな作品を読みたい!という方にぜひおすすめしたい物語です。
『自分の罪を隠せ、他人の罪を暴け』
集められた七人に突然告げられた言葉と、このクラブの真意とは——。
主人公は愛する妹の為に殺人を犯し、ひっそりと暮らしている一人の男。
そんな彼のもとに届いた怪しい招待状は、迷宮入りしたはずの彼の事件の真相を知っているというものだった。
指定された日時、指定された場所へ行くと彼は山奥の屋敷へと案内され……。
屋敷の中にはそれぞれ細部まで明確に再現された六つの"迷宮入り"事件の現場の部屋、そして事件の数より一人多い、七人の人間。
そこは『迷宮入りクラブ』。集められた人間はその誰もが主人公含めて殺人犯。しかしそのうち一人は冤罪者だという。
ここから各々が事件を暴き、犯人を被告として告訴し真相を暴いていく。本作品は主人公に視点で書かれているため、謎が解明されると共に退場者が出ると、徐々に範囲が狭まり押し寄せてくる謎解きのスリルにはじわじわとした恐怖が。
ひとつひとつの事件の謎も、それだけでも楽しめるほどにしっかりとした構成で「なるほど……!」と思わず唸ってしまうものばかり。
ラストに近づくにつれ、クラブのスローガンである『自分の罪を隠せ、他人の罪を暴け』に徐々に染まっていくような主人公の心理描写もすごいの一言。一気読み必至の面白さでした。
殺人犯だらけの中に一人の羊。
最後に主人公は何を選び、掴むのか。そして何を手に入れるのか。
迷宮入りクラブとは一体——?
探りながら、疑いながら、わずかなヒントも見逃さずに隅々まで読んでいきたくなる物語です。
寝る間も惜しんで読みふけってしまいました。最後のエピソードまで緊迫感が続く、本格ミステリーです。
主人公の若槻明宏は、ある日妹を強姦した男を射殺する。密室での殺人。事件は迷宮入りし、彼は人目を憚るようにして生活していた。
しかし、ある時届いたのは彼の罪を知る人物からの招待状。迷宮入りクラブと称するクラブへ連れて行かれた彼は、そこでゲームをすることになる。
用意されたのは、6つの迷宮入りした犯罪と7人の容疑者達。しかし、7人の中には1人、冤罪の者がいる。
お互いの罪を暴き、そして自分の罪を他人に被せる為のゲームが始まる――
主人公の若槻はもちろん殺人の罪を侵している為、冤罪者ではありません。読者もそれをわかっているので、若槻と一緒に他の事件の推理をしつつ、別の参加者からは犯人として追われるというヒリヒリしたスリルを味わうことができます。この筆力が物凄い!次々に展開される謎解きと頭脳戦。通常のミステリーは推理役が犯人を追い詰めていきますが、謎解きをしながらも追われる立場というのが他に類を見ないアイディアです。最初から最後まで緊迫感がすごく、気がつくと夢中でページをめくっていました。
一つ一つの謎もよく作られていて、ミステリー好きにはたまらない本作。6つの迷宮入り事件が出てきますが、情報の開示がうまいので各事件の情報が混乱することはありません。伏線もしっかり貼られており、謎解きが終わった後に該当部分を読み直してみると「ああなるほどなぁ!」と感嘆することも。
各事件の犯人は誰か?
冤罪者は誰か?
若槻は自分の罪をどうやって他人に被せるのか?
そしてゲームマスターの目的は?
いくつもの謎に包まれながら、時間を忘れて読みふけってしまう。そんな読書体験をしたい人におすすめの一作です!
赤の他人同士が集められ、殺し合いをさせられるデスゲーム。
本作もまさしくその形式ですが、このクラブの参加者は一人を除いて全員が殺人犯。誰がどの罪を犯したのか、自分の罪を隠しつつ相手の罪を暴くのが、この『迷宮入りクラブ』です。
最初から最後まで非常にスリリングでした。ほとんど息するのを忘れていたと思います。
迷宮入りした事件が6ケース。トリックや動機の推理劇も6ケース分。
これだけでも読み応えがあるのに、いつ自分が告発されるのかという緊迫感や、クラブの目的は何なのかという疑念、更には参加者同士の腹の探り合いなどもあり、幾重もの頭脳戦・心理戦をどっぷり楽しめます。
物語冒頭で語られる主人公・若槻の殺人の動機は、腑に落ちるものでした。その怒りは尤もだと思いました。
ですがこんなクラブに参加させられ、他者を陥れることで、どんどん後戻りできなくなっていく何とも言えない気持ちの悪さがありました。
ラストに明かされた真実。その勝利は、勝利と言えるのか。彼は何に勝ってしまったのか。そして何を失ったのか。
いくつか想像できる今後に、どうしようもなく心のざらつく読後感でした。それが最高でした。
すごかった。本当に面白かったです!