存在しない因果の代わりに張られるのは生温かな蜘蛛の巣のような罠

理由ない怪異は理由ある怪異より恐ろしい。ならば、理由を付けてしまえばいいというのは人間が自然現象に妖怪の名を与えたように古来からある話だけれど、この作品はそれで終わらないのが本作。

気さくでどこか緩く気怠げな雰囲気を纏った兄の会話は巧妙な線を引き、編んだ罠に陥ったことも気づかないように絡め取っていく。
悪意とすら呼べない底知れなさや、雑談からいつの間にか怪談に切り替わっている自然な流れな心地よくもあり恐ろしくもあり。

一人称ホラーの妙だけでなく、もう逃げられないし絡め取られたままでもいいかと諦めそうになるような兄の語り口も魅力です。

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