「いわくつき」とか「訳あり物件」とかはよく聞くけれど

 ひとり暮らしを始めた兄のお話。

 現代もののホラーです。兄の語りかけてくる言葉を、弟の立場で聞いているという形式の物語。
 本当に、ただお酒を飲みながら楽しく仲良く会話してるだけ……には違いないはずなのですけれど、だからこそなんとも言えない恐ろしさがあります。

 ちょっとネタバレ気味になってしまうかもですけど、語られていることそのものは本当に思い出話や近況報告のみ。
 そこに不気味な内容はあれど、でも作中のリアルタイムでは優しい兄ちゃんが目の前にいるだけで、たぶんそのはずで、でもそれがここまで怖くなるんだから途轍もない。
 ちょっと読み終えた今も若干動揺している部分があります。
 いやだって、そんな、ええ?

 こう、「ドカッとおっかないことが起こってギャーッてなって終わり」、では済まない分だけ、余計に腹に残る怖さがある……。
 この尾を引く不気味さが好きな作品でした。

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