シャッターを切る時、あなたは何を想像するか――?

はじめに、個人的にすごく好きな作品です。

まず、文体は一人称視点の特徴である主観的な思考と、風景や街並みの描写を組み合わせて、世界観を表現していて、とても良いと思いました。
加えて、プロローグ「トーキョーに咲く花」で表現される「トーキョー」の描写が繊細で美しい。

キャラクターは1人1人に人間味を感じる特徴があり、かつ、それぞれ胸に秘める何かを持ち合わせていると感じました。
アネットは恋に盲目で料理ベタ、かつ少々強引なところがありますが、繊細な一面を持っており、彼女の色覚の特徴も相まって、ただの元気な少女ではない、苦い現実を生きる一人の人間として確立しています。
マコトは普段は気怠げな様子ですが「食」についてはある意味貪欲。三半規管が弱く乗り物に弱いところはチャームポイント。そして、カメラに関しては非常に真摯に向き合っている。アネットに対しても、少々抽象的ですが、きちんと手法を教授するあたり、真面目さもうかがえます。

第6話まではゆったりと日々の生活と人間関係が丁寧に描かれ、個人的には好みな作風です。水素で走る無人タクシーや、疑似サーモンなど、随所に世界観の設定の要素がちりばめられているのも好印象。
第4話以降では、テトラクラマシーであるアネットと、色覚多様性(2色覚)であるマコト、二人にとってカメラ(写真を撮る)の意味が特別なものであり、二人の間に言葉はなくとも、それを無意識に共有しているように見えて、ちょっとロマンチックな印象を受けました。

そして、肝心の第7話以降、物語は一気に加速します。
個人的に気になったのは、デイドリーマーズの設定とカメラ(写真を撮る)の繋がりです。マコトは、「写真を撮るということ」=「自らが想像する世界(視える世界)を認識すること」だと捉えています(第4話)。それは、複合現実の世界で実体化させることができるデイドリーマーズの設定と重なる部分があります。
今後、この重なりが、二人の関係をどのように構築していくのか、楽しみでなりません。

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