年の割に理知的で、ちょっと引っ込み思案で、なんだか不器用そうで、どこか引いた目線と距離でいるけれど――でもよくよく見ていると「ああ、この子は子供なんだなぁ」なんて、つい頬が緩んでしまうような。
そんな女の子って、かわいいと思いませんか?
「こちら」と少し異なる並行世界。妖精や鬼、悪魔といった人ならざる存在が伝承やお伽噺でなく、見えざる隣人として当たり前に同居する世界。そんな世界の片隅で、「見えざる妖精を見る」目を持った小学生の女の子――白瀬 白菊は、そうした「かわいい」女の子です。
彼女と、彼女をとりまく人々――と、それから人ならざる存在の、ささやかな日常と、いくつかの事件のおはなし。時々無暗に甘酸っぱくて、時に少しだけ物悲しくて、でも最後はきっと優しい、そんなお話を。
喫茶店らしくコーヒーか紅茶など傍らに置いて、おひとついかがでしょうか。
妖精が見える小学生女の子、そして常に側にいる天真爛漫(すぎる?)妖精。
不登校で周囲と交じり合うのが苦手な主人公ですが、一人称視点で読者に見えてくるのは実はツッコミ要素多めの彼女の思考。彼女を通して見える世界は妖精、もしくはその縁ある物であふれていて、新鮮で面白く、でも少し妖しくてコワイ部分も垣間見える、そんな世界。
作中には、面倒見の良い悪魔や、理知的な鬼、あるいは人魚など様々な幻想的な存在が登場し、世界を拡げてくれます。
そんな世界と、その世界にある大きな流れに巻き込まれ、護られ、そして自身で立ち向かいながら、彼女が成長して行く、小さな女の子の物語です。
軽快な文章と、奥行きのある世界観から生まれたキーワード、そして本作のマスコット的存在の妖精、ルリの愛嬌ある(ありすぎる?)言動が、読者を引き込み、先を読ませてくれます。
対象が小学生とされているにしては凝った設定と世界観、大人でも十分楽しめる内容。
軽い気持ちで妖精の世界を覗いてみるのも、面白いと思います。
可愛くも不思議な妖精を連れた少女の一人称によって語られる物語です。
初めこそ小四(約10歳)らしからぬ達観した語り口に違和感を覚えましたが、彼女が特殊な環境・状況に居ることや、現実の日本とは異なる世界観であることが判明するにつれ違和感は無くなりました。10歳の主人公が世界を旅する作品も多いですからね!
とにかくキャラクタが魅力的で、訪れた読者を優しく物語の中へ招き入れてくれます。人物の特徴やキャラ同士の繋がりが掴めたあたりで物語は少しずつ次の段階へ、核心へと近付いてゆく。そういった導線もお見事なので次々と先を読み進めたくなりますね!私も日々の更新が待ち遠しい作品の一つでした!
主人公や、彼女らを取り巻く人物たちや舞台の描写も丁寧で映像が頭に浮かぶようです。例えるならば18時台あたりに放送されているアニメを見ているような。いつか実際に映像で見てみたくなるほどに完成された世界観です。物語のラストも良いですね!
個人的に一番好みだったのは「 」付きの会話分から地の文へ移行する部分ですね!まるで不思議な御伽噺を読み聞かせて貰っているようで、この作品が持つ魅力と非常に合っていました!
このように語り始めるとキリがないほどの素晴らしい作品です。
ぜひ多くの皆様に読んで頂きたいと思います。お勧めです!
妖精や鬼、悪魔などの人外が、日常的に人間と共存している並行世界を舞台に、一人の少女の成長と冒険を描く児童向けファンタジー。
主人公の少女は、不登校児でありながら常に妖精と共にあった。並行世界で喫茶店のマスターをしている叔父に育てられ、いつも守ってくれる少年と共に、人外絡みの問題を解決している。
そんな中、主人公は叔父にお遣いを頼まれる。その寺で妖精絡みの壺の件を解決してほしいとのことだ。難なくそのお遣いをこなしたものの、今度は桜に子供が誘拐されかけるという事件が起こる。しかしそれは、桜の精を利用し、企てられたものだった。問題解決のたびに、主人公と少年の仲は深まる。そして海に出かけた時に事件が起こり、人魚を助けるのだが、そこに主人公が以前かかわった鬼が登場し、主人公を「妖精の女王」と呼んだ。
主人公と少年の過去にまつわる出来事が明かされる時、主人公に選択の時が訪れる。
主人公を利用しようとする派閥からの使者との対峙。
そして、平和に人と人外が共存している世界をひっくり返そうとする企み。
果たして、主人公がつかみ取るべき未来とは?
家族関係が切なくて、個性的な人外が面白くて、妖精の口が悪くて、ついつい、笑てしまう場面も多く、説明も分かりやすかったです。とても魅力的な人外や人間関係が展開され、とても楽しく拝読出来ました。
是非、御一読下さい。