愛されることと結ばれることは異なこと。だから、賢明に懸命であれ。

中華風ファンタジーといえば
陰謀・絢爛・皇位継承……時に妖術など、愛憎渦巻きそして美麗な活劇が魅力ではないでしょうか。とっぷりと浸れるのがこの作品。
架空世界の為、ジャンルとしては異世界ファンタジーの区分にあたるのかもしれませんが、中華風の特質として歴史・伝記的な背景を併せ持ち、しっかりした知識に基づく世界観を構築していないとどこか上滑りしてしまう、難しい分野でもあります。
この作品ではその世界が見事に描き上げられています。
主人公・沙華は美貌だけでなく教養があり上品でいて、作中視点であっても皇子に並ぶに相応しい女性です。それでいてしかし、庶子的な、読者に近い感覚も垣間見せ、読んでいて決して置いてけぼりにならないバランスの良さがあります。 

溺愛、とタイトルにもありますように序章では天龍の表す皇子・躘と、紅い花の表す主人公・沙華が結ばれることが示唆されています。
そして互いを運命的に想い合うことが序盤からひしひしと伝わってくるのですが――その過程から目を離せないのは、立ちはだかる後宮の陰謀、出自の秘密がありましょう。これを「最強」ヒロインがどう切り抜け、そして結ばれるのか。
美しい描写表現と共にご堪能頂ければと思います。

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