第4話

 ……と、勢いよく出てきたのはいいが今日で攻略者の仮免許が本免許になることを忘れていた。


 そう言えば竜胆家の両親はダンジョンで死んだと聞いたが、死ぬ死なないには何か条件があるのだろうか?


 とりあえず攻略者管理センターに向かうことにした。


 確か1番近いのは秋葉原、今住む両国からは歩いて30分ほどで電車なら5分ほどだ。


 何なく到着したそこはゲームセンターの跡地に作られている。

 こちらの世界でもゲーセンは閉店ラッシュだったらしい、これも時代の流れか。


「すいません、本免許発行をお願いしたいんですが」


 1時間程の順番待ちの後にエルフの様に特徴的に耳の長い美女に説明する。

 これも現実世界とは違う所、異種族の出現だ。


「承知致しました、仮免許と同行者2人の署名はお持ちですか?」


 仮免許と多夏哉と夏希の署名が入った冒険者承認書を渡す。

 これは仮免発行から1ヶ月間2人の攻略者に同行して一人前の攻略者として保証するという証だ。

 

「三級攻略者と二級攻略者、お2人の署名を確認しました」


 塔を探索する攻略者はシーカーと呼ばれ、三級が最下位として準二級、二級、準一級、一級と続き、準特級、特級を最上位としている。


 どの塔にも共通だが、塔は1階層から100階層で構成されていて、30階層までの低層は三級攻略者、60階層までの中層が二級、90階層までの上層が一級、91階以上の最上層は準特級以上の攻略者のみが立ち入りを許可されていた。


「おめでとうございます、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」


「藤原公平です」


「……藤原公平、ですか?」


 しまった、つい本名を言ってしまった。

 マスクをしていたから顔ではバレなかったのに……


 管理センターの女性職員が苦笑いする……これが嫌なんだよな。


 、と。


 攻略者免許は偽造防止の為に登録者のDNAから作られるから俺が英雄本人だとバレてしまうはず……なのだが。


「申し訳ありません、登録名は改名前の本名となりますのでで登録させて頂きます」


 何故か俺のDNAは高橋秀樹と言う人間のものだった。


 ……もしかして、俺はその高橋秀樹が異世界やらもう1人の英雄なら色々妄想したヤバい奴なのではと思って高橋秀樹が住んでいた家を訪ねたことがある。


 結果的に言えば、それは間違いだった。


 高橋は


 自室で死んでいたらしく、既に遺体は灰になっていたが、間違いなく本人だったと母親が話してくれた。

 学生時代の友人だと嘘をついたのは心が痛かったが、嘘をついても確認しなければならないと思った。


 死んだ人間が蘇ったという可能性もあるが、今はそこまではわからなかった。


 このことを多夏哉に話すと。


『わからん』


 ……そりゃそうだ。


「それではこちらになります、半年に1回更新及び昇格試験がございますのでお忘れないようお願いします。更新を忘れてしまいますと1つ下の階級で作り直しとなってしまいますのでご注意下さい」



「わかりました、ありがとうございます」


 攻略者免許を手に取ると、年甲斐なくわくわくしてしまう。


「よし、行くか!」


 待ってろよ、今夜の晩飯!!

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