第13話

 多夏哉が帰って来ずに2日。


 夏希曰く2日くらいなら帰ってこないのはたまにあるらしいが胸騒ぎが収まらず、に連絡した俺は凛花と夏希が寝たのを確認してある場所に向かっていた。


「千塔攻略団の本部ってこんなにでかいのか……」


 場所については知らなかったが家からは約15kmほどの距離を調べずにで来ることが出来た、それも走って10分程でだ。


「無事に着いたのね、こっちから行こうとしていた所だったわ」


「ええと……シャスターチャだよな?」


「だからいつものシャスでいいわ、呼び辛いでしょ?」


 出迎えてくれたシャスは何処かの舞踏会に行くくらいオシャレなドレスを着ていた。


「多夏哉についての話は本当か?」


「ええ、詳しくは中で話しましょ」


 それは東京23区の外れにあった。


 何かに似ていると思ったらイ◯ンショッピングモールと瓜二つだ。


 準塔デミダンジョン、とシャス談。

 一部そういった建造物が完全にダンジョン化しないで変化することがあるらしい。


 そして到着したのはいわゆるフードコート、店は全てやっていなかった。


「誰もいないな」


「他の団員は攻略中だから当然よ」


「行かなくていいのか?」


「いいの、私は攻略失敗の責任を取らされて今はヒラの団員だから」


「すまん」


「なんで謝るのよ、公平じゃないんでしょ?それとも本人って認めた?」


「違うが、何となく」


「気にする必要は無いわ、他の団員から妬まれていたのは知っていたしいつかはこうなるとわかっていたから……さ、本題に入るわよ」


 シャスがステータス画面を広げて見せて来たのは現在の第634塔の攻略状態だ。


「最上層の100層での攻略失敗後、公平以外の団員は帰って来ることが出来たわ」


 すると塔の10層ごとにマークが現れる。


「塔には10階層ごとに転移装置があるの、一度起動すれば誰でもいけるのだけど貴方のお友達は今第35層にいるわ、だから30層までは簡単にいけるわね」


「35層!?結構危険な場所じゃないのか?」


「申請だと学生の実地訓練で10階層までの申請は出されてるわ、だから何故そこにいるかはわからないわ。それと脱落出来ないのは新総団長が塔全体に神骸魔術をかけたみたいね……」


「なんだよその神骸魔術ってのは」


「神骸を持つ攻略者が使える魔術よ。普通塔内で死んだ場合は攻略の記憶を一部無くして拠点に戻るのだけれど、この神骸魔術はそれが出来ない代わりに塔内攻略者全員の能力を向上させるの」


「拠点に戻れないってことは、死ぬってことか?」


「そうよ、でも公平ならその魔術を無効化できる。でも私には無理だから呼んだのよ。でも気をつけて、現総団長は鎖骨背理さこつはいりだから」


「それがどうしたんだ?」


「……それも忘れているの?」


「だから本人じゃないんだって」


「背理はよ?」


「信者?」


。背理は弔い合戦だって言って団員を巻き込んで攻略中なの、だから急がないと知り合いは遅かれ死ぬわね」


「それはまずそうだな、今すぐにでも背理と話を出来ればいいが……」


「それはダメ」


「何故だ?」


「とにかくよ!それに記憶を失ってる状態で1人で行かせるわけにはいかないわ、私は公平の案内とフォロー、魔術を解除したら撤退よ、いいわね?」


 時間の無い今は従った方がいいだろう。


「本当に助かる、多夏哉は恩人なんだ、もし俺に何か出来ることがあれば何でもする」


 つい手を握るとシャスは顔を真っ赤にしてしまう。


「すまない!つい」


「べ、別に平気よ、それじゃあ早速だけれど今から準備して……」


 ドゴォォォォォォォォン!!


「うぉっ!?何だ!?」

近くの壁に穴が空き、穴から誰かが入って来る……まさか。


「お久しぶりですねシャスさん、公平さんを独り占めですか?」


「凛花!?何で!?」


「公平さんのいる所に私ありですから。私を尾行して公平さんの所に辿り着いたのですか?」


「ねぇ、今の本当?にいちゃんが塔から出られないって……死んじゃうの?」


「……それは」


「盗み聞きしてしまいすいません、ですが家族である私達に内緒で勝手に進められても困ります」


「かっ、家族!?公平まさか、凛花とけ、けけ、結婚したの!?」


「してないし適当な事言うな、でも多夏哉が家族同然ってのは本当だからな。心配するな、今から助けに行く」


 夏希は目を潤ませていた。

 ここで見捨てるのは人としてあり得ないだろう。


「待って、これ以上は誰にも公平の存在を知られる訳にはいかないわ、公平は魔術解除ぁけしてくれればいいの」


「は?そんなこと言ってる場合じゃないだろ」


「場合なの!特に背理に実は公平が生きているなんて知られたら……」


「どうなるんだ?」


 凛花とシャスは黙る。


「とにかく正体は隠す?何が何でも否定しなさい!」


「っても背理が何処にいるかもわからないしすぐ近くにいたらどうしようもないだろ」


「大丈夫よ、これがあればね」


 シャスが持っていたのは神骸だ。


「探神の神骸ですね、自分に必要なものや人を探す力があるとか」


「これで背理の場所はわかるわ」


「それ便利だな」


「は?何言ってるのよ、神骸をいくつも持っているじゃない」


 ……そうだった。




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