第7話
英雄、
第634塔に設置された献花台には無数の献花と俯き泣いている人々が大勢。
その人数は100、いや10000人はいるのでは無いだろうかと言う数だった。
「ん?あれは……」
テレビで見たもう1人の俺、その傍にいた少女だ。
「
一緒について来た夏希が名前を呼ぶ。
白く透き通る様な肌、腰まで伸びる黒髪、泣き腫らした眼ではあったが美少女と断言出来るだろう。
確か準特級冒険者だったはず。
「嫌です!一緒にいるって、ずっと一緒だって言ったじゃないですか!」
「大切な人を失くすのは悲しいよね」
「……そう、だな」
両親を亡くした夏希には重なるものがあるのだろう。
泣き崩れ棺にしがみつき、程なくして脱力して動かなくなった凛花を周囲の人達が連れて行く。
もう1人の俺と特別な
顔を隠してきて正解だった、あの子の前でこの顔を晒していたら最低のクソ野郎だ。
「これからどうなっちゃうのかな。凛花ちゃんも、私達も」
「……わからない」
無責任だろうが今の俺にやれる事は無い。
少なくとも英雄と同じ顔の俺は関わらない方いいのだろう。
◇ ◇ ◇
「…………」
「…………」
無言。
「…………おかわり、いるか?」
「おう、もらうぜ」
多夏哉に飯をよそう。
「…………」
「…………」
そしてまた無言。
いつもなら元気な夏希にちょっかいをかける多夏哉の話し声で盛り上がる食卓だが、今日は違っていた。
「……お風呂入って寝るね」
「ああ、おやすみ」
夏希は早々に部屋に戻って行ってしまった。
残るは俺と多夏哉。
「すまねぇな、今日は色々考え事しててよ」
「考え事って、英雄のことだよな?」
「それもある」
それも?ってことは別に懸念があるってことか?
「単刀直入に言う、コウヘイ、お前英雄様と何か関係があるんじゃ無いのか?」
どくりと心臓が跳ねる。
唯一の、そして最大の隠し事。
それを見抜いているかの様に多夏哉は目を合わせ外そうとしない。
言うなら、今しかない。
「わかった、でも1つだけ」
「何だ?」
「俺は全て事実を話す、でもそれは信じられないかもしれない、頭のおかしい話だって思うかもしれない……それでもいいか?」
真剣な眼差し、それは俺の心を見抜くかのようだった。
「……わかった、今夏希を呼んでくるから待ってろ」
そして。
夏希と多夏哉の前で俺は全てを話した。
神様のくだりは濁そうかと思ったがそこも包み隠さず話した。
「……何かあるとは思ったが、まさかそこまでぶっ飛んでいたとはな」
「じゃ、じゃあ英雄さんとこーへーが同じ人ってことはあれだけ強くなるってこと!?」
「わからん、同じ人物だから可能性はあるかもな」
「そっか……」
「……俺の話、信じるのか?」
「え?当たり前じゃん」
当たり前なのか?
「言ってるだろ、お前は嘘をついている様には見えないってな」
「……まさか」
「看破スキル、大抵の相手の嘘は全て見抜ける。ま、これがなくても信じてたけどな」
お見通しか。
「お、お兄!それ私には使ってないよね!?まさか私がこーへーのこと……」
「だが、面倒なことになったな……もし俺と同じ看破スキルで他の誰かに正体を見抜かれたら何をされるか分からねぇ」
「無視しないでよ!……ってそうなったら、こーへーがいなくなっちゃうってこと?」
「可能性としては十分ありえるな」
「そんなの絶対嫌!」
「俺だって嫌だ、2人と離れるなんて考えられないしまだ恩を返せてない」
「とりあえずは目立つ行動は避ける事だ。今まで通りに生活していれば問題は起きないはずだしな」
「わ、わかった」
その日はそれ以上の結論は出ず、とりあえずの対策として目立たない様にしばらくの間外出しない事にすると決まっただけだった。
俺に何かできること……
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