概要
私たちの誰も、魂の行く末を知らない。
※本作は2021年配信の終末百合SFアンソロジー「ハッピーライフ・シュガーエンド」収録作の改稿版になります。
〝異常災害〟と呼ばれる人知を超えた事象の連鎖がもたらした〈終末現象(カタストロフ)〉によって、人類の生存圏が縮小した未来。人々は五つの独立共同体都市を形成し、それらを中心に独自の生存戦略を育んでいた。
蔡紀明(ツァイ・ジーメイ)は、五大都市の一つ、生命循環都市イェレベスで、都市機能の中核を担う僵尸(チァンシー)技術の研究を行っている。研究に行き詰まりを感じていたある日、紀明は他の班長と検体の分配を行う際に、自分を名指しして自殺した検体の提供があることを知らされる。提供者の名は李瑶月(リー・ヤオユェ)。紀明のかつての親友だった。
紀明は瑶月と過ごした日々を回顧しながら、瑶月が死
〝異常災害〟と呼ばれる人知を超えた事象の連鎖がもたらした〈終末現象(カタストロフ)〉によって、人類の生存圏が縮小した未来。人々は五つの独立共同体都市を形成し、それらを中心に独自の生存戦略を育んでいた。
蔡紀明(ツァイ・ジーメイ)は、五大都市の一つ、生命循環都市イェレベスで、都市機能の中核を担う僵尸(チァンシー)技術の研究を行っている。研究に行き詰まりを感じていたある日、紀明は他の班長と検体の分配を行う際に、自分を名指しして自殺した検体の提供があることを知らされる。提供者の名は李瑶月(リー・ヤオユェ)。紀明のかつての親友だった。
紀明は瑶月と過ごした日々を回顧しながら、瑶月が死
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!かつて少女だった者達の生と死
「巨大災害以降、現代とは死生観・生命観が変わってしまった世界」「かつて少女だった主人公達の再会、そして天才少女だった一人が欠けてしまった三人組」という骨子の類似性から、読み始める際にはやはり伊藤計劃『<harmony/>』の先入観がありましたが、読み進めるごとに相違点が浮き彫りになりました。
それはひとえに、ジャンルに掲げる「中華風SF」が醸し出す雰囲気や思想の違いからなるものだと思います。
内容とは若干ズレるかもしれませんが、不老不死を夢見る文化は数多かれど、始皇帝の不老不死探求に始まり仙人を志す道教など、中国の文化と不老不死は切っても切れない繋がりを持っています。
また不老不死…続きを読む - ★★★ Excellent!!!社会の贄としての僵尸
けだるく陰鬱な終末の風景が目に浮かんできた。読む進むと、著者が好んで書く「異常終末世界」の陰鬱だが、決して嫌いではない世界観に包まれる。「異常終末世界」をテーマにした作品を書き続けているだけあって、ぶれのない世界観に安心して浸ることができる。具体的な表現ではなく、総体としての文章や文節が、著者が描きたい世界を醸し出していて心地よい。
生と死、滅び行く世界などが淡々とした日常に溶け込み、主人公は本人の僵尸を引き連れて、その死の背景を追い求める。もちろん、その先に結論などあろうはずもない。それは主人公も最初からわかっているのだろう。探すことそのものが主人公にとってかけがえのない行為なのだ。そのこ…続きを読む