ネオ時代小説の仲間入りか? 名作ここにあり

過去に拝読した際に素敵なレビューが既にたくさんあったので、レビューを送るのは敬遠していたのですが、再読してやはりこれは書くべき作品だと思った次第です。

本作の強みはたくさんあるのですが、中でも敷居の低さが最大の強みです。一般的な時代物は難解な単語や持って回った言い回しなど、ライトな層は取っ付きにくいものですが、本作はタグにもある通り和風ファンタジー。時代物の良さを生かしつつ、飾り過ぎない文体で包んでいく。そして、みんな大好き王道の展開、アツい戦闘と個性的な登場人物たち。そんな様々なギミックの足し算が成功した作品だと思います。万人受けを狙うと地味な作品になりがちですが、本作はそんな憂慮なんて吹き飛ばしてしまうほどの仕上がりです。

また、物語が場面ごとに違った顔を見せるのも本作の醍醐味。シリアスな回もあれば、クスッとできる回も。もちろん、戦闘は緊迫したものに。これらが上手く作用して、物語にメリハリがしっかりとついている印象です。登場人物にも自然と愛着が湧くので、自分だけの推しを探してみるのもいいかもしれません。

無料で読めてしまっていいのか、と思わずにはいられないほどに秀逸な本作。読者目線で楽しめるうえ、作家目線でも勉強になる。ネオ時代小説の名を冠するに恥じない作品です。

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