第9話 術師

「我名はテツオ!孤高のダークプリーストにして七天魔王の一人!」




「毎回そうやってなのるのやめてもらってええかな」




「こまるなセニョリータ。我輩のセンセンシブな存在感をかきみだされてわ」




「ちょっとなにいってるかわからないですね」




アイリはパーティメンバーにいれるのをミスったと感じ始めていた。




だが心が癒えていくのがわかるのでキレずにはいた。




「その七天魔王ってのはなんですか」




「ククク・・・説明しよう・・・我・・・」




ラムゥトとぼっさんは聞いたことのない魔王に気付きはじめていた。これが嘘の話であると。




「まぁええからその話はおわりにしようやのアイリはん」




「ククク仕方あるまいここまでにしておいてしんぜよう」




とにかくプリーストを手に入れた一行は練度上げをかねて金等級クエストをこなすことにした。




帝国の破壊兵器ウィザードエンド城塞を破壊のクエストを受注する。




帝国とは王国と対をなす国で小さな扮装が今も各地で続いていた。




帝国は亜人がおもな種族で構成されており、王国の人族でできた文明とは相容れぬ存在だった。




ウィザードエンド城塞は動く要塞で魔族討伐のためにつくられた特殊兵器でもあった。




破邪の玉で駆動しているという噂があったが実際はどうかわからない。




ウィザードエンドは王国西部にあるアッシュ国に隣接する帝国領土と王国領土の堺に存在した。




アイリ達は転移の呪文を雪姫の知り合いにかけてもらうといっきに前線へとむかった。




「助けてくれぇえ!」




「嫌だぁ死にたくない死にたくない」




助けを求める自警団の兵隊たちであふれかえり、城塞からは迫撃砲が炸裂し、地面にあなぼこをつくりまくっていた。




アイリはラムゥトに指示すると電撃の魔法で砲塔を無効化した。




「さぁはやく逃げるのですみなさん!」




「ありがてぇー!」




ちりぢりになっていく兵士達。




城塞に乗り込む準備をととのえると一気にラムゥトが飛翔しつっこんだ。




そこにいたのはゴブリンの覇者だった。




ゴブリンの覇者は亜人族の中でも高位の魔物で皮膚が分厚く魔法耐性にすぐれていた。




物理でおすしかないと判断した三人はそれぞれの得物を取り出した。




ラムゥトのもつ雷神の槌はゴブリンの覇者をはじきとばした。




与作で切り裂くアイリ、灼熱のリングで鎧を強化するぼっさん。




「炎刀!与作きり!」




灼熱のリングの効果で熱気を帯びた刀はゴブリンの皮膚を切り裂いた。




「よさーくは木をきるーへいへいほー!へいへいほー!」




ズタズタに皮膚をさくには軽いテンポの曲調だ。




「キエエエエエエエエエエエエエエエ」




「よさーくぅう”はきーーーをきるぅうう” ヘイヘイホー!」




「ギョエエエエエエエエエエエエエエ」




「なんやアイリはんのりのりやないか」




「私が昔すんでいた世界にあった名曲なのですよ」




ゴブリベンジャーもエンチャントファイアの影響で刀が嘶いている。




「ゴブリン死すべし!!!!!」




テツオが遅れてやってきた。




「フゥーハハハ!!我の速攻魔法堕天使の吐息でやつらも粉々よ!」




「いやテツオさんの出番はもうないですよ」




「しるかっ!感じろ!レクイエムだゴブリンよおびえろ!」




「グルルルゥゥゥ」




「いやマジかんべんしてくださいよテツオさん」




「ダアアアアアアアアクプリイイイイイスト!」




爆誕してしまったダークプリーストのテツオさんだ。




「ニンゲンコロス・・・」




最後の力をふりしぼって暴れたゴブリンの覇者だったが与作とゴブリベンジャーによって蓄積されたダメージが決めてとなり倒れた。




「ゴブリンは素材にならないからそのまま放置して動力源を探しましょう」




しばらく探索すると破邪の玉がはめられている動力部分をみつけるとアイリは取り出し、城塞は機能を停止、スチームの噴出も止まった。




王国に戻る事にした一行。



破邪の玉をみつけた面々は雪姫に報告すべく王国の首都に戻ってきていた。




雪姫は破邪の玉をみるなり倒れ込む。




「なんということでしょう破邪の玉が帝国の手におちていたとわ」




破邪の玉が交わるとき災いが降り注ぐとされている。




「まずい事態ですわ。今のところ何もおきてはいませんが」




「学園にひとつは封印することにしましたの」




どうやら学園に封印可能な祠があるらしい。




「あなた達には学園で祠の警備をおこなってもらいたいの。生徒として侵入して」




「夢の学園ライフがはじまるのね!」




ひゃっほいと喜ぶアイリ。




「まずは学園入学の手続きをしてきますわ」




魔道学園に祠があるらしくその警備もかねて学園に侵入することとなった。




「金等級だからって調子にのるなよ冒険者風情が」




貴族の生徒が大半の魔道学園では鼻つまみ者扱いだった。




「それではアイリさんラムゥトさん今日から学び舎で勉学に勤しんで頂きますわ」




「勉強なんてしとうないーーー」




「ぼっさんもおるやで」




「あらっびっくりしましたわ鎧のおかた」




ぼっさんをみてもそこまで驚かないのが魔道学園の教師たるゆえんだ。




魔道学園では魔法の初歩から剣術算術とさまざまな事柄を生徒に教えている。




「魔法とは何ですかシュライさん答えなさい」




「魔法とは大気に浮遊する魔素を触媒に魔力を通電させることで具現化する方法のことです」




「よく答えられましたね」




拍手がとびかう中生徒はてれくさそうに席についた。




「魔法の扱いは慎重にせねばなりません。ですから皆さんも気軽に魔法はつかわないようにしてください」




「スチームと魔法の混合蒸気魔法があるのはこぞんじですね」




蒸気魔法とはその名の通りスチームと魔法の混合魔法だ。それによりよりよい生活基盤が作られている。




「たとえば上水につかわれる水も蒸気魔法によって洗浄され産み出されているのです」




「魔法座学の講義はいったんここまでにして実技にうつりましょう」




杖をとりだすとあらゆる魔法は杖から発動させるのであると語りだした。




ひとしきり魔術について解説しおえると炎の龍をつくってみせた。




炎龍は渦をまき空中で旋回したあと消え去った。




「アイリとかいったなそこの庶民、頭がたかいんじゃないのか頭が」




アイリは変なのにからまれたとげんなりした。




「このアイン・シュヴァルツ伯爵家嫡男であるアイン・シュヴァルツ・ホーキンスと肩を並べて講義を受けるなど傲岸不遜の極み」




「冒険者風情が身にあまる光栄と思え」




ホーキンス伯爵と名乗るは金髪蒼顔、長身痩躯の男だ。




エルフの血を受け継ぐホーキンスはすらっとしなやかな体つきにとがった耳をもつ。




「ゴホンっ、アイリさん実技の講義中ですよ」




「なんで私が注意をうけなくてはならないのか」




「口答えするんじゃありません」




「はい・・・」




アイリは大人しくすることにした。




それにしてもホーキンスは気に入らない奴だ。




「フフフハハハハ我名はダークプリーストがっっ」




突如なのりでるとマントをひらめかせてうつぶせにたおれるテツオ。




「テツオオオオオオオオオオオオオオ」




アイリはテツオをいたわるようにかけよるとホーキンスのせいにすることにした。




「いま見ました!私ホーキンスさんがテツオの鳩尾をなぐるところを!」




「ふざけるなっ!劣等種め!」




カチーんときましたね。




「決闘よ!」




受け取りなさいと手袋の代わりに麻袋をなげつける。




「貧民が調子にのりよって!貧乏人め!貴族の真似事か!」




ホーキンスとアイリは決闘する事となった。



決闘は賭けの行われていた荒野でやることとなった。




「泣いて謝らせてやる!」




「のぞむところよ!」




剣を抜き向かい合う二人。




「ゆくぞ!」




剣先をのの字をなぞるように回し突くホーキンス。




与作ではじきかえすアイリ。




「ぬるいっ!」




アイリの与作の唾にうちこむ。甲高い音とともに飛んでいく与作。




「ゴブリベンジャーの神髄みせたるわい!」




ホーキンスの剣をゴブリベンジャーで叩き折る。




「勝負あり!勝者アイリ!」




審判をつとめるラムゥトが割って入った。




「ぐぬぬ・・・小娘ゆるすまじ」




ホーキンスは小物臭をただよわせる発言をするとそそくさと去ってしまった。




「私の勝ちね!ラムゥトさん!」




「やったぜ嬢ちゃん!」




イエーイとハイタッチ。




「なんの騒ぎかとかけつけてみれば!このフロムをさしおいて決闘なぞ許さん!」




「きた!メイン盾きた!」




騒ぎだす民衆。




「我名はフロム!ナイトシーフのフロムなり!」




カカッっと参上したフロムは黄金の鉄の塊でできたイージスと言う名の盾をふりかざしながらいった。




「ダアアアアアアアアアアアアアアアクプリィイイイストのテツオ様参上!!」




テツオはフロムの参上の仕方がきにくわなかったらしくかぶせてきた。




「貴様、我輩の邪魔をするとは許さんぞ」




「プリィィィィィイィイイイストのテツオ様が参上した」




「わかったから黙れ」




二人は目線で火花を散らすと互いの得物を抜いた。




「主よ!みちびきたまえダークヒーリング!!!」




「うおっなんだこの漲る負のパワーわ!」




「ヒイイイイイイイイイイイイイリイング!」




「実に不愉快なオーラだ!!みなぎってくるぅぅうう!」




「あぁやばいかもしれん」




フロムは盾のイージスに剣を差し込み詠唱を始める。




「主よ、我らの御霊を食膳にだし願いを聞き届けよ!」




イージスと言う名の盾には顔が描いてありそこから白いオーラが流れ出た。




フロムはそのオーラを身にまとうとダークプリーストに対抗呪文をとなえた。




「ホーリーシンボル!!!!!」




ダークプリーストのヒーリングをかき消すように発光する白いオーラが出現した




「これは・・・冥府に伝わる秘術・・・ダークシンボル・・・!」




ヒーリングをテツオは行った。




「ぐわああああああああああああああああああああああ皮膚がただれるううう」




ホーリーシンボルの力によってダークな部分が浄化されつつあるプリースト。




「プリーストになってしまううううううううううううううううううう」




テツオはダークプリーストではなくなってしまった。




「でかしたフロムの旦那!」




「ハァハァハァ」




「これで勝ったと思うなよ!ちきしょうめ!」




涙目になりながら杖を振るうテツオ。




「プリーストになってしもうた・・・」




「いや、それが正しい」




アイリはすかさずツッコミを入れた。

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