第11話 勇者

「やぁやぁようこそ、働きたくない勇者ご一行!まっておったぞ!」




元ニート属性、現勇者属性のアイリは巷で話題になり有名だった。




「何か手ごろな商品はないかな」




「はい、これが噂のブラックダイアモンドでございます」




魔石がブラックダイアモンドとして販売されていた。




「5金貨でかえるのかやすいな」




そういうとアイリは4金貨で買い取ってくれないかと交渉を始めた。




魔石1カラット当たり0.2gのブラックダイアモンドになる。




100gの魔石を大工房爆破事件の日にラムゥトのコアに入れてくすねていた。




(2000金貨になるじゃないか!)




「大口の買取となりますと少々割り引いていただきませんと・・・」




手ぐすねをひいて割引をまっている商人は貧乏ゆすりをはじめた。




「1カラット3金貨でなら買い取ってもよろしいですよ」




「のった!」




金貨1500枚で100g分の魔石を販売することに成功した。




「いやぁ~うはうはでございます」




「こちらこそウィンウィンってやつですね!」




「ウィンウィン!」




ラムゥトのコアから魔石を取り出すと雑貨商へと売却し、受け取りは月々500金貨で3カ月の払い受けとなった。




金を持て余すことになったアイリは博士の元へ向かう事にした。




博士はロストテクノロジーの研究を行っていた。




「ふむぅ発掘された遺跡からでたこのパーツを使えば空も飛べるはずなんじゃがむにゅむにゅ」




王国歴ができるはるかまえの遺物を研究しているところだ。




「博士ー!金貨ならあるぞー研究はどうだー」




「アイリ殿ではないか!」




「スチームジェット機の制作がおもうようにいかんでのう」




「おおジェット機ならしっとる!」




「なんと!博識な!」




王国ができる以前の遺跡にあったオーパーツのひとつとしてジェット機のエンジンが発掘されていたのだ。




「あとフジテレビの球体という建造物もみつかっておる」




「わしにはようわからんが何か人が集まるスペースではなかったかと考えられる」




アニメや漫画といった娯楽が存在していたと記されている日誌をみつけていた。




「なつかしすなぁ~」




「アイリ殿は異世界の住人とききおよんでおりましたが」




何故漫画やアニメがあったと記されているのか気になったアイリは日誌を読むことにした。




どうやらこの世界は氷河期をこえさらに数千年の時を経て、アイリのいた日本と同じ場所にいるのだと自分の書いていた日記をよんで知った。




「私の日記じゃないか!おそるべし!おそるべし!おそるべしー」




自分の書いた日記が何故ここにあるのか考えた結果。




あの像にふれて転移したのではなくタイムリープしたのではないかと考えた。




たしかにジェット機やら漫画がでてきていることから推測できる結果といえた。




景色が幾千万もの風景にかわっていったのを覚えている。




「なんと!アイリ殿の日記であると・・・つまり・・・遺跡にあったノートの所有者が現在にいるという矛盾」




「時を旅してきたのですかなアイリ殿!」




博士は核心をついてきた。




「いや、私も分からないのですけど転移したように感じただけで時を旅した可能性もなくはないですね」




「ほーほー!こりゃ珍しいサンプル、いや失敬、被験者に出会えたものじゃ」




博士の知識欲がくすぐられた。




「アイリ殿その転移した場所を教えてはいただけまいか!」




「たしか・・・」




アイリは知っている限りの情報を博士に提供した。


アイリが転移してきたと思われる場所に戻ってきていた。




そこには何もなく、あるのは遺跡への入り口のみだった。




「博士、遺跡のようなものの入り口がありますが・・・」




「間違いない!遺跡じゃ」




「トーキョーハクブツカンと書いてあるなワシの翻訳がまちがっていなければ」




「博物館の上にダンジョンができたのか!」




「ハクブツカンとはなんぞや」




「いろんなものが展示してある美術館のようなものです」




「ということはお宝がやまもりというわけじゃな!」




間違ってはいないのだがアイリにとってはそこまでワクワクする物でもなかった。




「迷宮攻略組の兵隊をよぶのにも時間がかかるのう・・・」




「私たちだけで十分ですよ!なんたって金等級ですから!」




「そりゃぁ頼もしいのぅ」




迷宮の入り口に近づくと自動ドアとおもわれる扉がくすんで閉ざされていた。




与作を間にさしこみ手この原理でこじあける。




ガガガという擬音とともに扉がゆっくりとひらいた。




すると閉ざされていた扉がひらくと同時に電気が復旧したのかアナウンスが流れた。




「ようこそ東京博物館へ。ご来場の皆様に申し上げます。園内ではおさない、かけない、しゃべらないを厳守しごゆっくりとご堪能ください」




「博物館にきたでー!」




「ひゃっほいじゃぁ!」




アイリにとっては目新しいものがなかったが戦争でつかわれた道具等が博士にとってはショッキングだったのかライトアップされる展示品を何分も見つめていた。




「これ・・・もってかえってよいのかな」




「誰も咎めやしませんよ。持って帰って研究につかってください」




「やったぞい!」




これとこれ、それとこれとと何個もラムゥトのコアに収納していく博士。




「なんか明らかに作りの違う扉があるんですが」




「そりゃぁダンジョンの扉じゃろう」




「未発掘のダンジョン・・・ということはお宝!お宝!」




「やりましたな主殿」




「開けゴマ!!」




扉はピクリともしなかった。




「なんでじゃぁ普通ひらけゴマじゃろおが」




そういうと扉はなんともなくスーと開いていった。




「どういうわけじゃぁああああ」




「「汝扉を開きし勇者たちヨ・・・いざゆかれよ・・・」」




「なんか脳内にひびきわたってくるんじゃけども」




「おそらくダンジョンのしかけのひとつでしょう」




恐るおそる一行はダンジョンにもぐっていくのであった。




博物館ダンジョンでは骨恐竜の魔物や軍人骸骨の魔物が現れた。




側面がガラスばりになっており、すすむと横からうごきだしてでてくるという仕組みだ。




「ふんぬ!」




せまりくる骨恐竜をラムゥトが粉砕する。




すると残骸から魔石が100カラット採取できた。




軍人骸骨が銃を発砲してきた。乾いた破裂音が炸裂する。




「主よ!」




咄嗟にラムゥトが覆い隠す。ラムゥトの背面には銃創がいくつもできあがっていた。




「ラムゥトさん!」




「問題ない」




「ヒ――――リィイイング!」




銃創が消えていく。




「与作ラッシュ!ゴブリベンジャーアサルト!!」




カタカタと骨をならしながらくずれていく骸骨たち。




「なんぞ、この銃という筒わ?」




「弾倉から弾丸を筒に移し発射する兵器ですの」




「なるほど科学とは奥深いものじゃ」




長い年月を経て魔石が混合し魔力を放つ魔銃と化していた。




「どうやら魔力を魔素で発熱させ弾丸として発射する機構のようじゃの」




魔力があるかぎり打ち放題の超強い武器かとおもいきや、人には運用不可能なほど魔力が必要であった。




「我が発砲してしんぜよう!」




「トリガアアアアアアアアアアハッピイイイイイイイイイ!!」




魔銃を壁に乱射するとテツオは魔力ぎれになったのかたおれこんだ。




「テツオオオオオオオオオオオオオオオオオ」




かけよるアイリ。




「く・・・死ぬ前に伝えておきたいことがある・・・」




「アカン!死亡フラグがたつう!」




「故郷のユイにこの手紙を・・・」




「アカンテツオオオオオオオオオオオオオオオ!」




ぱたりと意識を失うとラムゥトはコアからエーテルをとりだしテツオに呑ませた。




「復活っ!テツオ復活!」




「なんか刃牙復活ってきこえたけどきのせいかな」




みるみるうちに魔力が回復していった。




「私は一向にかまわん!」




「テツオどこでそのフレーズを覚えたの!」




「復活ッ!テツオ復活ッ!




魔石を吸収してそだったクラゲがダンジョンに浮遊していた。




「狙いうつ!ロックオンストラトス!」




「だからテツオどこで覚えたのそのフレーズ」




浮遊するクラゲの魔物を倒していくと重厚な扉にたどりついた。




「ほぉー珍しい転移の門じゃぁ」




アイリは見覚えのある夫人の像をみつけると元の世界にかえれるのではないかとふと考えたが、今が幸せなので複雑な気持ちだった。




「博士!教えた門がこれよ!」




「なるほどのう。下手にさわるとどうなるかわからんの」




一行は転移の門を触るかどうか談義しはじめた。



門を開けることにきめた。




門は魔石で出来ており固く閉ざされている。




魔力を流す側溝が扉の下部に見受けられた。




アイリ達はその下部に魔力をそそぎこむのに曰く付きのジョウロをラムゥトのコアからとりだして使った。




水が道を辿るように魔力が線にそって流れ出すと魔力に呼応して扉がゆっくりと動き出した。




転移がはじまり、ゲートが開かれその先には東京タワーが現れた。




そうすると、東京タワーの真下に転移の門が出現しそこには一面の雪景色が広がっていた。




積雪は数メートルあるだろうかダンジョンのように道が枝分かれしている。




「これはたまげたなぁ」




東京雪樹海コンクリートジャングルはダンジョンと化していた。




「あそこに人がいるわ!」




人影らしきものがみえたがどこかへ消えてしまった。




「まずは拠点を作ろう。大工房につぐ新しい発見だ!」




博士は急いで元いた場所へと戻った。




資材の搬入から拠点の制作にむけて着々と準備が進む。




王国では深淵の門が開いたと騒ぎになっていた。




「大変ですぞ~深淵の門がひらいたとの噂本当ですか?」




そういったのは博士の霧生助手だ。




「本当じゃ!いますぐ準備せい!」




「かしこかしこかしこまりー!」




霧生助手はすらりと長い脚を組みかわすとハイヒールで床をノックし、それを合図に小型収納魔動機が起動すると床内部から工具が飛び出してきた。




「準備はOK?」




そういうと大型のバッグを背負い込み準備はととのったかと問うてきた。




「ほっほう頼もしいのう」




「ではいくぞい!」




拠点にむけて馬車集団が動き出した。



東京ダンジョンの探索がはじまった。




「まずは深淵の門入り口に拠点を制作するところからはじめますぞ」




大工の職人達が大量に深淵の門へと入っていく。




突貫工事で一週間かけてつくったのが東京ダンジョン拠点αだ。




現地での排泄物の処理が地面にうめるだけということから衛星面の観点では設備不十分といえた。




しばし探索をすすめると歌舞伎町と看板がみえる場所にでた。




「魔力が濃いですね」




博士は魔力の濃さから魔物が繁殖していると推測した。




歌舞伎町のビルに侵入するとまだ内部の機工が活きておりエレベーターが動作した。




1Fにエレベーターがとまると扉が開く。




そこには大量の黄金ゴキブリが棲息していた。




わらわらと湧いてくる黄金ゴキブリにに逃げ惑う調査員達。




「与作ラッシュ!」




アイリが調査員をまもるかたちで与作ラッシュをくりだした。




黄金ゴキブリは金粉を撒き散らしながら砕け散った。




「危険ね!非常に危険よ!」




魔物は散ると巣穴へともどっていった。




黄金蟲(黄金ゴキブリ)からは金が大量にとれ、籠に黄金ゴキブリを数匹捕らえると拠点にもどることにした。




籠の中で黄金中は繁殖していた。




「黄金がわきでてくるかのようだ!」




博士は黄金蟲をしらべ、推測した。




恐らく魔力の宿った黄金をゴキブリが摂取して魔物化したと考えられる。




調べていくうちに黄金蟲は魔石1%に対して黄金99%の比率で構成されていることがわかった。




無機物でありながら意思を持ち動くゴーレムにも似た存在だった。




収穫があったと喜び王国へと持ち帰ることにした。




持って帰る途中に荷馬車から黄金蟲が逃げ出すという事件がおきた。




逃げた黄金蟲は大工房の熱気と魔力にさそわれ群がった。




採掘区域は閉鎖され、人がすめる状態ではなくなってしまった。




黄金蟲の繁殖力は凄まじく金貨につかえる金がとれることから冒険者が不法に採掘区に侵入することが増え始めていた。




ギルドでは黄金蟲採取のクエストが大量に不正受注され、事務方は困惑していた。


不正受注されたクエストで大金を稼ぐ者たちが現れた。




それは下弦の指揮する裏組織”月”のメンバー達だった。




月は下弦の一声で数十人の裏稼業兵士があつまる傭兵集団だ。




月の長シャルロットは下弦に光る月をみて今日も豊作だとしたたかな笑みを浮かべた。




ギルドの腐敗は実質国ぐるみでおこなわれており、不平等に利益が分配されていた。




そんな中龍の蹄団団長ハーデスは荒波にもまれながらも部下たちの食い扶持を必死に稼いでいた。




「これじゃぁ今月もピンチだな」




帳簿をつけながらハーデスはため息をついた。




ハーデスは部下を食べさせるのに必死で黄金蟲のクエストを受けることにした。











黄金蟲の繁殖力は尋常ではなくわらわらと採掘区域を埋めていった。




「なぁにい黄金蟲クエストに競合があらわれただぁ!?」




シャルロットはめをひんむいて驚いた。




下弦が統括しているシノギに部外者の競合が関与された。




「いますぐ始末しろ!」




シャルロットは焦ってはいたが激怒はしなかった、予測しうる事態のひとつとして対処しきる自信があったからだ。




月の幹部達が我先にと動き出した。




ハーデスの部下が拘束され行方不明になっていった。




ギルドにむかうとハーデスは探索依頼のクエストを発注した。




アイリ達は拠点αから戻り黄金の清算をはじめ、金貨500枚相当の黄金がとれた。




同時にアイリはギルドでみかけたハーデスの行方不明者探索依頼のクエストを受注した。



行方不明者探索のクエストは難度を極めた。




アイリ達は生産区域にて情報収集を行うことにした。




テンプル騎士団が経営するマドンナの店にきていた。




「ゆくえふめいにゃ~?しらんにゃ~」




マタタビをかぎながらよっぱらうマドンナ。




「そういえばハーデスの所のコマ使い達が最近みかけなくなっちまったにゃ」




ホークアイは鋭い目つきで話を続ける。




「月が関係してるかもしれないにゃ」




アイリは月に関する情報をホークアイとマドンナから収集した。




「奴隷商人を紹介してもらえないでしょうか」




マドンナにアイリは頼みごとをすると20金貨程を懐から出して渡した。




「そうにゃ・・・月のメンバーらしき人物の情報があるにゃ」




そういうと奴隷商のモブトを紹介してくれた。




「どうも、モブトでヅ」




アッパーで粘膜を刺激されすぎたせいか鼻水を垂らしながら店先に立つ奴隷商の店主モブトだ。




皮膚はトードになりかけており、鼻提灯をつくっている。




「へっへえわざわざおいでなすってもうしわけないでやんす」




「お探しの商品はありましたでしょうか?」




てをこまねきながら店主はアッパーを啜った。




「ひぃいぃいいはぁあぁぁきくぅぅうううううっっしシッ失礼しました」




アイリは下衆なものをみつめる視線で蔑んだが店主は気にも留めず話を続ける。




「最近はいったばかりの奴隷といえばA棟の10人になりますがご覧になられましゅかズピ」




鼻水をすするとA棟へと案内を始めた。




「A棟の奴隷は主に亜人で構成されており屈強な者もおれば貧弱な身なりの者もおります」




「フーハハハ!これぞカオス!ダークプリーストの禁忌ともいえる隷属の呪文をつかう時がくるとわ」




亜人種オークにリザードマン、猫人族様々な奴隷が整列した。




「フリイイイイイイイイイイイイイイイダム」




テツオは突然叫び出すとフリーダムを詠唱した。




それぞれの奴隷刻印が反応し、消滅していった。




「あ・・・ありがてぇえええええ!!!!」




ハーデスのコマ使いの亜人トムソンが解放された。




「さがしていたのはこの人です」




クエストにかかれていた特徴に合致しているリザードマンだった。




「トムソンさんですね・・・話を伺っても?」




アイリはトムソンにやさしく話しかけるとポーションをあたえた。




「交渉成立ですなッブシュ!クシュン!」




いい値で買い取ることとなった10金貨の支払いだ。




「カアアアアアきんっきんにひえてやがるっっ!」




「どっかでみたことあるなー」




アイリは動画鑑賞していた時の事を思い出していた。




ポーションをがぶがぶとのみこむとトムソンはお礼をいった。

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