第12話 戦闘

トムソンは月に攫われたと証言したが国に届くわけもなくハーデスの元へと戻っていった。




奴隷商のモブトは魔族化しかけていたがアッパーをやめれない状態であった。




テツオはあくまでもダークプリーストの信念をまげずプリーストの職をつとめており、モブトの治癒に貢献することにした。




「ヒイイイイイイイイイイイイイイイリンング!」




「あぁいえますフ・・・゛シュクシュ・・・ぞ・・・癒えますぞ!!!」




みるみるうちにモブトの容態はよくなっていき鼻提灯もきえるかとおもったが消えなかった。




「ありがたみをクシュかんじまシュ」




「ようやく人としての喜びをえられましたぞい!」




「ムッシュ!よき午後をおくりたまへ・・・」




プリーストとしての仕事を終えたテツオはマントをひるがえして言った。




アイリはモブトの肩を叩いてしっかり生きろよとシミジミと言った。




「今後ともよしなに」




奴隷商は機嫌をよくするとアイリ達にA棟の奴隷を安く提供できるといいだした。




奴隷刻印のはがれた奴隷達に再度印を刻むのには手間と費用がかかるためだ。




「まとめて100金貨でどうですかな」




アイリは迷ったが慈悲で買い取ることにした。




「まぁお金にこまってはいないしね。社会貢献ってやつよ!」




「主よ立派ですぞ」




買い取ったそばから解放していくアイリ達。




「ありがとうございます!恩にきます!」




感謝される気分は悪くなかった。




その中に一人解放されても動かない人間がいた。




それは、孤児のユイという少女だった。




「おかあさん・・・」




アイリの服の袖をもつユイ。




「アワワワワワワ」




普段いわれなれない無邪気な言葉に困惑するアイリ。




「主よ母性の発揮どころですぞ」




「よーちよちよちぼっさんでしゅよー」




ラムゥトはぼっさんを目線でしかりつけるとしょんぼりした。




「おかあさんじゃない・・・」




「ヨシヨシいいこいいこ」




ぎこちなく撫でるアイリ。パーっと笑顔になるユイ。




「フーハハ!このスーパー癒しすとの出番ですなヒイイイイイリング!」




さらに癒されていくユイ。




アイリはユイを仲間にすることにした。




「おうちくる?」




「うん!」




力強く頷く天真爛漫な少女がそこにはいた。



ユイはエルフという種族で透き通るような白い肌に海のような青い目をしたとがった耳をもつ少女だ。




裁判官の仕事を終えた雪姫はアイリたちのまつホテルへと向かった。




「かわうぃいいいいね」




雪姫はユイをみるなりネコナデ声で喜んだ。




おっさんであれば犯罪成立というところ一歩手前まで愛でるとユイを解放した。




「雪姫さんくるところまできてますわね」




アイリは怯えながらそういうと、雪姫スマイルで迎え入れた。




「そそそそそんなつくり笑顔やめてください」




凍てつく笑みにぞっとするアイリ、ユイは何が起きたのかわからない様子。




ラムゥトがそっとよいそり、まだ足元のおぼつかないユイを支えた。




「なんや、ユイちゃん」




「ヨロイ・・・しゃべってる・・・」




コツコツとつつかれるぼっさん。




アイリから離脱し、具現化するぼっさん。




「ワシは鎧やけどぼっさんちゅー名前があんねん」




「ぼっさん・・・ヨロシク・・・」




シェイクハンドだ。




「よろしくやでユイちゃん」




二人は打ち解けたようだ。私も我もとみんなで握手した。




「そうでしたわ。忘れていました借金返済おめでとうございます!」




アイリは稼いだ金をキッチリ返済につかっていた。




「ありがとうございます」




「融資の話がたくさんきていますがどうされますか」




首をふっていらないと答えるアイリ。




借金づけにされる未来が容易に想像できた。




ギャンブルに水商売での遊びくさるほど使い道はあったが堅実に生きることにきめたアイリには別世界の問題だった。




「黄金蟲退治のクエストがでていますがむかいますか?」




「そうしましょう」




黄金蟲討伐のクエストを受注すると、採掘区域へと向かう事にした。



黄金蟲退治は採掘地域で行われていたが退治どころのさわぎではなく




もはや乱獲する事で黄金をせしめようとする輩であふれかえっていた。




「テツオそっちにいったわよ!」




「ダアアアアアアアクイリュウウウジョン!!(捕獲 )」




虫網をつかってもっさりと捕獲していくテツオ。




「こんだけとってもまだわいてくるのね!」




「繁殖場を探して根絶やしにするしかないですね!」




「そういってもこんだけ湧いてたらわかんないですよ」




「ヒャッハー汚物は消毒だぁー」




高熱のスチームをはなつテツオ。




黄金蟲はとろとろと溶けて黄金にかわっていく。




応援として鍛冶士のジャックを呼んでおいたのが正解だった。




ジャックは溶けた黄金を巧みに採取するとインゴットへと変化させていき、インゴットに変えた金はラムゥトのコアへと収納していく。




わらわらと湧いてくる黄金蟲を捕らえては溶かすを繰り返す。




テツオのダークイリュージョン(物理捕獲)のおかげでかなり間引けたがまだまだ数は残っていた。




雪姫をお供に乱獲していく。




「てめえらここでなにやってやがる!」




そういって狩りを中断させてきたのは月のメンバー達だった。黄金蟲の狩場主張をしてきたのだ。




「横狩りはマナー違反だぞ姉ちゃんたち」




「我々はもとからここでかっていたが?」




「俺たちのが先に狩ってたんだ他所へいってくれ」




「おかしいな1時間はここでかっているんだが」




「うるせぇ!さっさとどっかいけっていってんだ」




月のメンバー達は狩場主張を続け、同じ場所で狩りを始めた。




「ダアアアアアクパニッシュメンッ!(制裁物理)」




「ぐはぁっ!」




杖兼棍棒の先で殴りつけるテツオのパニッシュメント(物理)が炸裂した。




「なんだぁてめえこらぁ!」




ホーリーシンボルという闇属性にのみきく魔法を月のメンバーが使った。




「グアアアアアアアアアアアアア目がああ目がああああああ」




「テツオどこのム〇カさんなの!?」




「バババババババルス!」




「ム〇カさんなの!?ねぇムスカさんなの!?少年の方だよね!?」




「どこかの文献でこういう時はバルスというと聞いた事がある」




「おかしいってその文献どうみてもらぴゅつぁじゃん」




「てめえら何いちゃこらしてんだしねっ!」




「あいったぁ・・・」




アイリの頭蓋に敵の鉄拳が落ちた。




「主に手をだすなど許せん」




サンダーの魔法で一網打尽にする。雷岩族のラムゥトであるからこそできる芸当だ。




「シャルロットさんに連絡するんだ!」




月のメンバーは長のシャルロットに助けを求めることにした。



「シャルロットざんす」




シャルロットは豊満な体にひげを蓄えた銀髪金眼の屈強な男だ




月の兵隊は電信の魔法でシャルロットへと通信を繋いだ。




「電信にて失礼致します。狩場にて競合の冒険者が現れました至急救援を求めます」




「ご苦労、救援の旨しかと承ったざんす」




自警団の狩場荒らし事件につぎ冒険者の競合が続き兵を疲弊しきっていたシャルロットに追い打ちが来た。




やれやれと重い腰をあげると転移の魔法鏡へと足をつっこみ、どっしりと地響きを立てて転移してきたのは月の長シャルロットで、大地が軽く揺れると周囲は静まり返った。




シャルロットの補佐官グーブーはお尻にひっつき蟲のようにしがみつきシャルロットの魔力流失を抑えていた。




シャルロットは魔力流失という不治の病にかかっており、常に魔力が流失し続ける難病で防がなければ魔族化してしまい、魔力もたずの魔族になってしまう。




葉巻をふかしながら問う。




「どういうりょうけんでぇ・・・我々の狩場をぉ・・・つかってるざんすぅ・・・」




葉巻の煙がわっかになって宙に消えていく。




「どうもこうも、私たちが先に狩りをしていたのよ」




アイリは不満気に頬を膨らめた。




「そうねぇ・・・こっちの認識と少しずれがぁ・・・あるようざんすぅ・・・」




プカーっと煙を吹きかけるシャルロットのせいでせき込むアイリ。




「主に害成す愚か者よ。散れ」




ラムゥトはサンダーの魔法を放つがシャルロットのたるんだ下っ腹で弾かれてしまった。




「ふんぬぅッ・・・ざんすぅ」




シャルロットの装備するヘビーブーツが地面を抉る。




「問答無用・・・ざんすぅ・・・」




シャルロットのはりてがラムゥトを突き飛ばし、壁面にぶち込まれる。




ラムゥトのコアは一瞬輝きを失いもとに戻った。




意識が一瞬飛んだのだ。はりての跡が赤くラムゥトにつくとコアを光らせ激昂した。




博士から貰っていたスチーム可動式パイルバンカーをコアからとりだし、シャルロットの四肢にその先端をうちこみ、べこりとへこむ皮膚には鉄鋼がさけるようなひびがはいった。




「死して償えこの巨豚め」




「きょ・・・きょ・・・ぶただとぅぅッざんすぅぅぅうう」




ひびを自己治癒するとすぐさま俊敏に体をひる返し距離をとり、同時に地面にヘビーブーツで刻み込んだルーンを発動させる。




ルーンの呪いが発動し、周囲の魔素が収縮し爆発する。魔素爆発だ。




壁に足跡をつけるとその刻み込んだルーンによって文字が形成され、魔法が詠唱された。




足元で爆発するとその推進力で突進し壁を足場にし跳躍する。




「ヘビーラリアットゥ・・・ざんすぅ・・・!」




ラムゥトにラリアットをかますと地面にたたきつけ、同じ大きさの穴ができるほどめり込んだ。




またもコアの輝きを失うと先ほどより少し遅くして元に戻り意識を取り戻す。




「不覚をとってしまった・・・がっ!」




雷の魔法で体に帯電させ電撃を放つ。




「オロロロロロ・・・しびれるぅ・・・ざんすぅ」




ラリアットの姿勢で硬直し。嘔吐するシャルロット。




立ち上がりシャルロットをつかみあげるラムゥト。雷岩族の肢体がしなりながら無機物の摩擦音をたて動き出す。




雷撃でしびれさせた状態でコアから縄を取り出し拘束すると月のメンバー達は我先にととんずらしていった。



シャルロットへの尋問が始まった。




「クプププ・・・我々がどの程度の組織かご理解できていないようざんすね」




雪姫裁判長とともに尋問管の関根が笑みをこぼす。




「あなたがどうであれ我々は国家であることを忘れていないかしら」




「クプププ・・・ですから国を裏で操る月を御存じではないざんすか」




関根の顔色が悪くなっていくのが分かった。対して雪姫は厳しい顔つきになった。




「月だったらどうというのですか。狩場での横暴は調べがついています、正義にのっとり処罰するまで」




「雪姫殿のおっしゃるとおり、ここは厳しく追及するべきです」




「クプァわかっていないざんすね。こんな下手うってしまったわたすを放置しておくわけないざんす」




そういうとシャルロットの顔が紫色に変化し、泡をぷくぷくと吹きながらたおれこんでしまった。




足元からは警戒色をもったわけではなく、ただただどす黒いサソリがこぼれおちた。




暗殺蟲の一種でデススコーピオンと呼ばれる飼いならすのが難しい毒蟲でレベルも高く、すぐに岩を砂にかえて逃げ去ってしまうため痕跡も残し辛い。




「デススコーピオンを飼いならすとはやはり月、ただものではなかったようですね」




「それに毒の成分のおかげでヒールしてもまた死んでしまうだけなのよね。解毒は不可能だし」




アイリはそそっとかけよりサバイバル動画でみた応急処置を施し、ラムゥトも部族に伝わる秘術雷解で毒の成分を分解し始める。




するとシャルロットの顔色が通常時と同じに戻っていく。




「クププププァ・・・助かったざんす」




驚く雪姫と関根に対しアイリとラムゥトは良かったと二人で喜んだ。




狩場を争ったとはいえ他人が死ぬのは不快だったのだ。単純に正義心が強い二人だった。




「助かったのを喜ぶのは早いわね。今からあなたへの尋問がはじまるというのですから」




「えぇ、準備できておりますよ。私特製の拷問器具吐かせる君がね」




鳥の羽が何本も内側に向けて刺されておりスチームの上下運動によって自動で羽根が内部の標的をくすぐる仕組みになっている。




「クププ・・・えらく可愛い拷問器具ざんすねぇ・・・くププぷぷぷぷぷハハハハハハ」




効果は抜群のようでくすぐりたおして泡を吹き始めている。




「ハァハァ」




「クププ・・・まだまだざんす・・・ハァハァハハハハハハハハハ」




文字通り体が捥げそうになるほど歪んでいた。




アイリとラムゥトは若干引きながらも雪姫の楽しみっぷりをみていた。ぼっさんとユイは家でお留守番である。




関根はさらに羽の動きを速めるとシャルロットが降参の合図をだしたため止めた。




拷問は終わりの様で二人はほっと胸をなでおろした。



情報をきき出せたのでソレを解析官の人狼オズに引き渡した。




人狼のオズはふてくされながらも作業を続けていた。




なにやら不満がつのっているようで満月が近くなると興奮気味になるのだ、オズは自分の何をもてあまらせ、愛する者を失ったオズは愛に飢えきっていた。




「愛・・・愛ゆえに愛・・・あい・・・あいうえお愛飢え男」




一人そう呟くと愛に飢えた男は盛り、本能のままにあろうとする。




が、理性がそうせないのである人である部分をわずらわしくおもっている人狼オズが情報の解析に急いでいた。




月は王国の腐敗した部分、根幹から腐りきってしまっていることに気付いたオズは頭を抱えていた。




「どうすりゃいいんだ・・・処理しきれねえぞこんなもん」




ぼやきながらも対策を案じる一方で愛が急速に飢えていくことに気付いた。




「アイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!愛がたりませんねぇ!!紳士淑女たるもの愛を背負い愛を胸にきざみこんでいきていかなければならないというのに!」




遠吠えのように早口でのたまうと同時に情報の解析が完了した。




「エクセレント!!!その手がありましたか!」




オズは独り言を続けると資料をまとめ雪姫達のもとへとむかった。




下弦が現れたのはその時であった。二人は旧知の仲だ。




「オズ・・・愛はみつけられたか・・・」




「愛・・・遠のくほど儚く近づくほど狂おしい物!私はみつけられませんでした・・・」




「そうか・・・情報の分析は完了したのか?」




下弦はそう呟くと煙草に火をつけた。




「オズ死んでもらうぞ」




「愛ィ‼!・・・故にですか・・・?」




人狼はむくむくと双肩を膨らませながら狼の姿へと変貌する。下肢は人で上体は狼のオズが体を膨張させながら戦闘態勢へと移る。




「あなたには私の愛をうけとめてもらいましょうッ!月を操っていたのはあなたですねッ!」




狼の毛並みは鋭く針のようにとがっていた、強度は鋼の如くそれはすでに毛ではなかった。




立ち尽くす下弦に突っ込み抱き着く。




「愛をうけとめてくださいッ!!」




抱擁し、激しく締め付ける。




「無駄だ・・・」




下弦は枯れ木のように朽ちていき分身をうみだすと腰にさした刀を抜き下弦はオズを切りつけた。




「熱いッ・・・感じますよ・・・あなたの確かな愛の形ッ!!」




斬りつけられた背中を気にもせずバックブローで下弦を吹き飛ばし、鋭い毛並みが凶器となり突き刺さる。




空いた穴は木がささくれだったように穿たれているがダメージははいっていない。




木人の様に棒立ちになり、木が枯れて消え行く様に雲散霧消する。




「死ね」




またも分身を作り出し心臓を狙い一突きする。




オズは生命の糸が切れたように刀に身を預け、自重によって身が切れていく。




「これも一つの愛・・・ですねッ・・・!」




資料が空を舞い分散する。血に染まり、字がよめなくなるほどに――。



オズは人狼であり人と狼の心臓を二つ持ち合わせていた。




どくどくと脈打つ心臓が停止していくのを感じていたが、もうひとつの心臓が鼓動をはやめたことにより生命を維持していた。




「そそりたつ・・・感じますよあなたの研ぎ澄まされた殺意と愛ッ‼」




「気持ちの悪い奴め・・・二度しね」




刀を抜きもう一度突き刺す。




「はいってくるッあなたの愛を‼感じますよ‼熱く煮えたぎるように脈打つ私の何がッ‼」




オズは毛並みを逆立たせながら勃起した何をにぎりしめた。




「はぁ・・・はぁ・・・あいぃぃ」




「何故しなんのだ」




「愛ゆえにですよぉおおおおおおおおおおおお」




下弦を片手でにぎりしめ、もう一方の手で何を握りしめる。




木がくだけちるようにへし折れた下弦の分身が塵となる。




「ハッ私は何をしていたのでしょうかッ!」




果てると同時にオズは下弦を撃退する事に成功したが、狼の姿から人の姿へと戻り傷口から血液が零れ落ちる。




「愛・・・儚く尊い物・・・下弦・・・どこへいってしまわれたのか・・・」




虚無感が唐突にオズを襲い、途方に暮れながらもズボンのポケットの中に入れていた治癒スクロールを発動させ傷口を塞ぐ。




「仕方ありませんねぇ・・・情報を早く雪姫殿に届けなければ」




呟き、雪姫達の元へと向かった。




翌日、オズは雪姫とアイリに情報を伝達し終えると下弦を探すべく特殊部隊を編成し、討伐へとむかった。




その特殊部隊にはアイリ達も含まれており下弦討伐の任務を受領したアイリは準備を整えることにした。




鍛冶士のジャックの元へ与作とゴブリベンジャーをもっていきルーンを刻みこんでもらった。




与作には炎、ゴブリベンジャーには氷を。




「ツインエッジやかっこええ!!」




中二病感をくすぐらせるオーラをまとった二本の刀。




雪姫はジャックにバグナウを作ってもらい、爆炎のルーンが刻まれている。殴ると対象に爆発の文様が刻まれ爆発する。




ブーツの底にも爆炎のルーンを刻んでもらい任意に爆発を起こし攻撃にも移動にもつかえるように改良してもらった。




「100金貨かかるけど今回はただでええ・・・御上の頼みじゃけえの」




下弦の情報を集めるべくマドンナのいる酒場へとむかった。噂では月が経営しているとされている。



マスターのマドンナに話を聞くと猫人賊のマドンナはケツもちを月にしてもらっていることを明かしてくれた。




どうやら蟹と海老の魔族がすむ海底洞窟のダンジョンに逃げ込んでいる様だと酒場で噂話を聞いたと教えてくれた。




ついてきていたオズがマドンナに問いかける。




「愛を混ぜたエールをくれませんか」




「愛ならたっぷりくれてやるにゃ」




魔法でキンキンに冷えさせたエールをジョッキに注ぎオズにさしだす。




「んっまぁぃ!」




一気に飲み干すとオズは毛並みを逆立たせた。傷口が綺麗にいえていくのを感じていた。




テツオはオズの傷口がなおっていくのを見てなにやら呟いている。




「何故・・・我の出番を奪うのだあああああ」




アイリはテツオを慰めると海底洞窟ダンジョンへと赴く事にした。




海底洞窟ダンジョンは首都の西側に位置する海辺にある。




珊瑚の群れの中にあるダンジョンへ到着すると海老と蟹の魔族が襲ってきた。




アイリは与作の炎で焼き切ると紅くなった海老の魔族を食べ始めた。




「ホクホクしてじゅわーっと海老味噌が美味しい!」




海鮮の風味が鼻をぬけ体中を駆け巡る。




「蟹味噌もわりといける!」




テツオは蟹の魔物を解体しながら海老を蟹味噌にディップしていた。




雪姫はさとすようにいった。




「討伐の任務中ですよ!みなさん気を引き締めてください!」




海老をむさぼりながらも注意する雪姫。




それぞれが別の料理を作り始めてできたのが海鮮丼ー海底洞窟のシェフ風に添えて―、である。




「美みぞこれ!美味ぞ!」




アイリは海底に居る事も忘れてはしゃいでいたが、ここが月のアジトであることが確定する。




月のマークがなされた扉が見つかったからだ。かねてよりこの文様を合言葉にしていた。




何より水圧に耐えられる設計、空調の仕組みに関しても謎が多い。詳しくは解析官のオズから後できけそうだ。




「なんぞなんなんぞ!」




「ヤバイデーデカいのがきとる感じるんや!ワシっちゅー思念体レベルのモノになると察知する物がある!」




微生物の魔物、長い年月をかけて単細胞でありながら魔石を吸収することで肥大化したミジンコとツボカムリが大量に現れた。




しかし、すかさずサンダーの魔法で迅速に焼き尽くすラムゥト。




純粋なる魔石だけがそこに残るほどに苛烈に焼き払ったサンダーの威力はラムゥトだからこそのものであった。




大量にドロップした魔石に顎が外れそうになる雪姫とオズに対してアイリはゲームやアニメでみなれていたのもあって驚かなかった。




「貴重な魔石が採取できそうですね!」




雪姫はひとつの汚れもない魔石を抱え込んだ。




純粋無垢な魔石は高濃度のマナを放ち、力が溢れ出している。




雪姫やアイリ達の体のすみずみに魔力がいきわたり漲る。




「ミナギってギタ”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”!」




テツオのマントうきあがり波打つ。




「ヒーーーーハーッ!」




「分かる。分かるぞ!感じるんだ心の底から漲っていぐぅ”!!」




「ホオオオオリイイイイイイイイイシンボルッッッ‼‼(ダーク)」




特殊パーティのステータスが相乗効果でぐんぐん伸びていく。




「すすす、すごいですぞ!」




「パーティにバフがかかったところで先にすすみましょう!慎重に」




アイリがリーダーらしく発言する。




先程よりあきらかに視力体力の面において優れた実感を得られた。




遠い先にある壁の文字までよめるのだ。ココデイリグチとかいてある。




魔石とテツオのバフが二重にかさなり身体強化、魔力強化なされた集団は隠密に月のアジト兼ダンジョンである入り口にこれたのであった。


ココデイリグチとかいてある石板を動かす。




壁が観音開きの様に動いていく。




通路に直面し、道なりに進んでいくと製造工場のような広場が現れた。




微生物の魔物が藻を食べながら糞をしている。その糞には貴重な魔石が含まれ、ゴブリンがそそくさと回収している。




奥の方には淫夢をみせつけるサキュバスが眠りながらゴブリンの監視を行い、作業が捗る様サポートもかねて淫夢をゴブリンにみせている。




製造工場からは独特の臭いが発せられていた。




「キツイ臭いですね」




「いかくせーというかなんというか」




「何者か・・・」




しなやかに体をうならせおきあがるサキュバス。




「絶望のカリア様にしごかれたい不審者達がいるようね」




サキュバスは絶望を司る淫魔であり、快楽と絶望を相手にあたえることで支配コントロールしてきた。




「愛を感じますッ!」




オズはそそりたつなにをズボンにおしつけ悶えながら性の臭いを嗅ぎつける。




「なんかふらふらします」




雪姫がサキュバスのフェロモン魔法で魅了状態にされそうになるが、テツオがすかさずレスの魔法でかき消した。




「淫魔よッ我名はオズッ!みせられるものなら魅せてみろ夢とやらを!」




「誘われなさい・・・」




フェロモンがマナを伝いオズの嗅覚へとダイレクトに刺激し、逆立つ被毛が凶器のごとく鋭く伸びる。




「ガルルルル」




「愛を感じていますっ!!あぁそれは尊き聖なる物ッ!」




絶頂の渦中にあるオズは魅了されながらも自我を保っていた。何より愛に飢えていたオズに淫夢をみせた所で真実の愛の前には無力だった。




「あぁぁ・・・感じますよ・・・あなたの愛そのものを!」




サキュバスに抱き着き締め殺そうとするオズ。




「アハハハハハハ絶望しなさい!あなたの何が芋虫のようになる様をみるがいいわ」




幻惑され自分の何が芋虫になる幻覚をみるオズ。




「Oh...ジーザス」




より強く抱きしめ愛を満たそうとする。




「愛が絶望に負けるはずなどありえません!!」




「愛、愛故に愛!愛愛愛いぃぃっぃぃいぃぃいい!」




背骨をくだかれたサキュバスは意識を失いかけた。




「あぁあぁあああぁ・・・愛なのねこれが・・・絶望すら生ぬるい・・・」




強く強く雄叫びをあげ、サキュバスをその場にねかせた。




幻惑されていた一行は素面に戻り赤面した、しかしラムゥトとぼっさんだけは満足した表情を浮かべていた。




「絶望のカリアが逝ったか・・・」




羨望のナターシャと切望のヨハネが海底ダンジョンでひとつの終わりを感知した。




「なんと羨ましいことかしら二度羨望致しますわカリア・・・」




「おいぃカリアぁ!こんなところでおわってんじゃねぇよ!熱くなれよ!もっとあつくぅう!」




精神体となったカリアがヨハネとナターシャにお別れをつげにきた。




「ヨハネ・・・さようなら・・・あなたの熱意に絶望はかないませんでしたが待っていますよあの世で絶望と共に」




「カリア切望しろ!いきたいと!願え!」




「私は十分に生きたわ絶望のままにそれを否定する事はできないの」




「ナターシャ・・・あなたが羨ましかったわいつも、絶望の淵にいてとらわれず自由の身だったもの・・・」




「私はあなたが羨ましいのよ」




「ふふふ」




「お互い様ね」




「熱くなれよっっ!!!」




「さようなら・・・」




アストラル体となりマナの本流へと帰化したカリアの精神は平等に公平に世の中のマナへと変換されていった。




羨望のナターシャがハルバートを地面にめりこませ悔しがり、切望のヨハネは熱心にカリアの死を弔った。




「ゆるさねぇぞ侵入者共!」




アイリ達への憎悪が魔力になりかわり襲いかかる。




「ショックウェーブ!!」




魔力が津波のように具現化し押し寄せる。




アイリはぼっさんを装着し、与作の氷に特化した性質を利用して魔力の津波を凍結させようとしたが濁流にのみこまれそのままラムゥト達とともに深部へど流されてしまった。




通路を魔力の水圧で押し進まされ流れるままに波に乗っていくとタニシの魔物が群生するフロアに流れ着いた。




「びしょびしょですね」




「くっそ許さん!!」




地団駄を踏むアイリを撫でる雪姫。




タニシが群生するフロアではスチーム魔道具が空調管理をすべくプロペラを回転し、空調ダクトの底は目では見えないほどの闇に覆われている。




「こんなところに流されてしまうとはついているのかついていないのか」




オズは服を絞りながら毛並みをぶるぶるとさせた。




「疼く・・・ダークネスへの誘いがッ!深淵の底を眺めている様だッ!」




テツオは中二病を海底でもこじらせていた。




ドライの魔法を発動させ自分だけ乾燥する雪姫。




「アイリさんはぬれたままのほうがよろしくってよ」




「ふっざけ!」




尻をビンタするアイリ。




「ムホホホ」




悶絶する雪姫にどんびきしたアイリはドライの魔法を発動するよう強制した。




百合にはさまれる男がいないことに安堵したラムゥトとぼっさんは陰でシェイクハンドしていた。

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氷河期がきたのでニート脱却してスチームパンクな異世界で成功者になりたいです!放浪日記 GoodSunGGgaming @GoodSunGGgaming

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