第8話 組織

ギルドの依頼で復興事業をすすめていたところ、魔族の出没が報告された地域が確認できた。




「芳しくない事態ですわね」




雪姫はうつむきながらアイリをなでる。




「やめろやぁ」




ぷんすかと擬音がでそうなほど慌てふためくアイリ。




魔族が確認された地域は採掘地域のアッパー販売県内であった。




推測するに労働者が魔族化しているのではないだろうかということだ。




「国としては何かしらの責任をとらないといけないのではないか!」




アイリはここぞとばかりに雪姫につきつめた。




「ぐぬぬぬ・・・たしかにそうですが・・・私としても薬の販売は個人的に反対しているのです」




個人でどうこうできる問題でもないようで、雪姫自身も内外的圧力によって苦しんでいるそうだ。




「利権の都合で上院議員たちが生産の中止を拒んでいるのです」




「なげかわしいことだと憂いてはいるが、実際のところはどうなのだろうね!1」




笑顔で暗いことを言い放つアイリ。




「私としては個人で何かできるとおもってもいませんので責められても困ります」




涙目でアイリの頬っぺたをひっぱる雪姫。




「やめろやぁぁぁあ」




ラムゥトとぼっさんは二人で百合がどうのと談義している。




間に挟まれる男子はもげろという結論にいたると二人はそっとシェイクハンドした。


「大変です!」




ギルドの受付嬢が大急ぎでしらせにきた。




「発注していた木材に度重なる豪雨と湿気でカビがはえたようです!」




損失物扱いになり、未納品クエスト途中破棄による違約金が発生した。




「金貨10000枚とのことです」




「諸経費さっぴいてもぼりすぎやろがあああああああああああああ」




アイリは発狂した。




「竜の蹄団はどこにいった!」




「それが行方不明になっておりまして」




泡をふきながら倒れるアイリをラムゥトが支えた。




(これだからビジネスは信用が一番大切だって動画でみたじゃないか)




「わたしの怒りが有頂天に達した」




竜の蹄団が失踪したのは確定的に明らかだった




「どおすりゃえええんじゃぁあああああああああああ」




「主よ。落ち着かれよ」




何度いったフレーズだろうかとラムゥトの心に木霊する。




「かんにんやでぇえ!ほんまかんにんやでぇえ!!!」




ラムゥトにとちくるったかのようにすがりつく。




「災いってこれのことちゃうやろな!まじわってへんぞぉ!」




「切腹かこれー!?えぇ!?切腹もんかー!?」




「ハラキリは御免こうむりたい」




ラムゥトはアイリをなぐさめる手段はないかと思案したが逡巡して無駄であると悟った。




自体を重くみた雪姫はアイリをなでながらローンで返済することをおすすめした。




「雪姫ハァンどないかしてくんなまし」




「薬も事業も私個人でどうこうできませんので申し訳ありません」




「銀等級の冒険者様でしたら月々100枚100回払いとして」




下請けにだしすぎたのが悪かったようでクレームが大量にはいってきているとの事だ。




アイリは極貧生活を思い出し身震いした。




「いやぁじゃぁ草ばっかたべるのはいやじゃぁひもじかぁ」




食事を必要としないぼっさんはアイリの今後を憂いていた。



極貧生活が続いていた。




「草ばっかりあきたんじゃぁ~~」




「主よ。キノコも食べられよ」




「同じ草じゃーキノコも草もおんなじゃぁ~」




「いっしょくたにするのはようあらへんで」




雪姫が作った得体のしれない弁当箱をよそめに草などを食べるアイリ。




「何故たべていただけないのかしら」




(こんな禍々しいオーラをはなつ食べ物があるか!)




食品からは泡がふきだし紫色にひかっている物体が弁当箱につめこまれていた。




ラムゥトが試験管をとりだし採取している。鑑定結果がきになるところだ。




「オロロロ・・・雪姫ショックですわ」




「空に猫がとんでみえる~」




アイリは幻覚かと、うたがったがどうやら違うようだ。




巨大な茸の頭が猫のようになっていることから猫茸と名付けられている。その胞子が飛んでいたのだ。




猫人のホークアイからきいたことがあったアイリは猫茸の胞子をつついた。




「にゃぁ~」「にゃ~ぅ」「にゃ~ぁ」




猫のような鳴き声とともに塵となってきえた。




猫茸は自生しやすくサイズも大きいので食材としては重宝されていた。




ぐつぐつと煮込む鍋に猫茸をくわえていく。




「にゃぁにゃぁうるさいのです」




煮立つ毎ににゃぁにゃぁと気泡がはじけていった。




「ホークアイただいま参上にゃ」




猫茸鍋につられてやってきたホークアイがしなやかにのびた尻尾を振る。




「猫人にとって猫茸は生活必需品にゃ」




「借金で首がまわらなくなっているときいたにゃ」




どこから聞きつけたのかホークアイは猫の手を貸してくれるようだ。




「招き猫といって福をよびこむアイテムがあるのにゃ」




これをつかえと渡してきた。




にゃんごろにゃんーー。




招き猫はにゃんにゃんいうと手を招き始める。




するとネギをもったカモの魔獣鴨葱が現れた。




「料理につかうといいにゃん」




ラムゥトは加工の魔法をつかうと一瞬で鴨葱を鍋の具材に変化させた。




「ごちそうになったのだぁ!!」




アイリは目を輝かせながら鍋をむさぼった。




招き猫はなおも幸運を招き、ギルドから大工房でのダンジョン攻略依頼がきた。




大工房採掘地域にダンジョンが発生したのでその調査を行えということだ。




「一攫千金ぞ!!」




「せやでーここでしこたま稼ぐんや!」




ノリノリのぼっさんとアイリはラムゥトの言葉も聞かずはしゃぎたおしていた。




「みたことあるな!ダンジョンで稼いでヌクヌクウッホホイ!するっていう小説!」




アイリはニート時代に読んだ小説を思い出してワクワクしていた。




「そうとなれば話は簡単よ!私にまかせなさい!」




「冒険者をはばむようにあらわれるトラップ!トラップ!の連続で困難のはてにモンスターを討伐して宝箱から豪華賞品をゲット!」




「なるほど、そういうながれなんやな!」




現実は違った。




「おもってたんちゃうーーーーーーーーーーー」




一本道の洞窟ダンジョンで、罠など存在せずただただ石が転がっていた。




「わいらはなにをしにきたんや!」




「調査よ!」




冒険ではなく調査であった。




「仕事感強ない‼?」




冒険ではなく現地の調査をするだけと確かに言われていた。




「言葉のマジック!」




やってられるかと投げ出そうとしたとき宝物庫の扉が突如目の前にあらわれた。




「じーーざすファッキン!」




宝物庫の扉をおそるおそる開くとそこには大量の白金貨とプラチナ防具の山があった。




「アーメンはれるやー!」




使い方を理解していない単語をならべるとお宝の山へとダイブした。




「おほーこれがお宝の触感かたまらんのう!わしどうにかなっちゃいそうぅー」




「ぼっさん最高やでー冒険やんこんなんいっつアドベンチャー」




求めていた冒険とは離れているがこれはこれでありであった。




防具を売却して調査の報告をおえた面々。




500金貨の収入となった。




「やったぜ!」




渾身の笑みをくりだすアイリ。




「ってぜんぜんたりとらんやないかーい!」




ぼっさんを殴りつける。




「あっっしゅごいぃいい」




「一歩一歩がだいじやでアイリはん」




ビシバシとたたきつけるアイリ。




「一歩あんっ一歩あーっすっごい」




「大事やでハハアアアン」




500金貨といえば月収平均20金貨の25倍にあたる額だ。




「嬉しいといえば嬉しいのだけど微妙な気持ちね」




金銭感覚がくるっているアイリをよそめにラムゥトは懐がホクホクすると喜んでいた。




「だいたいあんだけの財宝みつけてまだ半分借金のこってるっていうのが度し難いわ」




招き猫の効果で次に訪れた幸運は魔族討伐の依頼だった。




「次々と依頼がはいってくるわね」




「よっしゃ―この調子でばんばん稼ぐでー!」




数時間後




「あんまりだああああああああああどうしてこうなったあああああ」




魔族の部屋という異次元トラップにかかっていた。




魔族が大量に沸く部屋に転移させられるのだ。




「ぼっさあああんどうにかしてくれぇ」




「せやかて無理なもんわ無理やで」




防具のぼっさんになすすべはなかった。




「ラムゥトさんお願いします」




「御意――」




サンダーの魔法が部屋中をかけめぐり、次々と倒れていく魔族たち。




「流石ラムゥトさんやで!」




戦利品を大量に残してきえさる魔族。




「金貨の剣に銀鉱の盾ぼこしゃかドロップするやん!」




「アッパーまであるどういうことだ」




元労働者たちのもちものであった。




「雪姫に聞いてみよう」




「せやな」




転移された門から戻る一行。




「雪姫はんアッパーが魔族からとれたんやがどういうこっちゃ」




「それは元労働者たちのものでしょう」




「つまり魔族化した労働者が服用してたもんちゅーわけか」




何か気まずさを感じる。




「労働者を倒してえた金貨で飯食うのは気がひけるなぁ」




「雪姫もショックをうけているのですよ」




とにかく戦利品を全部金貨にかえることにした。




買取屋にむかうことにする。雪姫をひきつれて。




雪姫に紹介してもらった買取屋だ。




「こみこみで200金貨でかいとらせていただきやす」




「労働者さまさまやなぁ!」




気まずさは吹き飛んでいた。




「こないハッピーなれるんやったらウェルカムやわ」




「せやせやウェルカムや!」




ぼっさんの具現化された手とハイタッチをする。




がんがん魔族かって借金返済だと腕まくりするアイリ。




「せやかて依頼がはいらんことには魔族もおらへんで」




「それまではスチーム兵器の見学でもしてこよう」




博士のもとへむかうことにした。




「ようこそ我ラボへ冒険者のかたがた」




どややーと自分で開発した兵器をみせびらかす博士。




「こちらはスチームの力で排出するポンプガン!」




魔力とスチームの配合によって高出力で筒から弾丸を飛ばす兵器だ。




「なななんと破邪の玉によって高出力小型化に成功したのじゃ!」




戦車からハンドガン、ショットガンなどがある。




「これによって魔力のつかえぬ人族でも運用が可能となった高出力兵器じゃ」




「自警団が強化されたことによって魔族からの侵攻もふせげるぞい」




「度重なる侵攻によって国土はせばまるいっぽうじゃった」




「がっしかし!これで我王国も安泰じゃ」




二人の博士はこれみよがしに兵器をみせびらかしながら語った。




自警団のコバルト大佐がうむと頷いている。




^発砲許可をいただきたいのですがよろしいですか!」




アイリがスチームポンプガンの発砲許可を得た。




「ひゃっはー!汚物は消毒だぁ!」




射撃演習場の標的にむかって乱射しまくるアイリ。




魔力をスチームで噴射する魔力放射器で標的を焼き尽くす。




「ひゃっほーい!」




「こんだけはしゃいでくれると作ったかいがあるってもんじゃわい」




二人の博士と乱舞した。




「かしだしを許可するぞい」




「それはありがたい申しで」




二人とぼっさんはラッキーだと喜んだ。




雪姫がギルドから連絡があったとかけつけた。




「お三方、また今度は魔族侵攻の阻止がきております」




「稼ぎ時じゃいひゃっほい!」




三人は雪姫とホークアイをつれて魔族侵攻阻止のクエストにでかけることとした。




「博士さんきゅー」




雪姫の案内で王国最北端の街モスクベルクに到着した。




モスクベルクは行商人がおおく往来する商業都市だ。物価が三倍近くやすく仕入れに訪れる人もおおい。




「まずは宿をとりましょう」




ホークアイが任せるにゃとかけずってまわり見つけてくれた安宿へと泊まることになった。




「けっ獣人と同じ宿になんかとまれっかよ」




悪態をついてでていったのは行商人のマルクだ。




亜人差別は根強く王国の隅へいけばいくほどつよまっていった。




「しょんぼりですにゃ」




「気にすることないよあんなおやじ」




アイリと雪姫はホークアイをなぐさめた。




「亜人に対する差別が最近ひどいにゃ」




度がすぎるほどの事はなかったが目にみえて迫害されているのがわかった。




どうやら魔族に似た容姿の種族がいるらしくそのせいで人族から嫌悪されているそうだ。




「魔族をけちらしてうさばらししましょう!」




大群を率いてあらわれるわずか1時間まえの出来事であった。




「モスクベルク陥落の危機に陥るとは・・・」


「ひゃっはー人族も亜人族もみなごろしだぁー!」




魔族筆頭のボンゴは指揮をとりながら叫んだ。




逃げ惑う行商人をやつざきにしては金品を強奪する。




「自警団の連中もではらってて恰好の狩場だなぁ!兄者!」




そういったのは指揮官のボンゴの弟コンボだった。




ボンココンボ兄弟と畏怖されるタートル魔族だ。亀の様な甲羅を背負った魔獣でひじょうに獰猛だ。




するどい双眸からは殺意がだだ漏れていた。




「そこまでよ亀頭兄弟!」




卑猥な侮蔑をはなったのは冒険者のアイリだった。




「ボンゴにい。許せんぞこやつ我らを亀頭などと愚弄しおって」




「あぁコンボ弟よ。許せんなぁ許せんよなぁこやつら」




二匹の魔獣はアッパーをとりだしむしゃむしゃとかじりついた。




「オギョギョ」「コギョギョギョ」




どでかい亀の魔獣へと姿をかえる二頭の魔物。




魔力スチームポンプガンで焼き払う。




「ぐえぇぇえええ」「ぎょええええええ」




「グリルパーティーはおすきかな?」




アイリは喜びながら二頭をやきはらった。




兄弟はやかれながらも合体した。




「グリルパーティは好きだぞ小娘ぇええ」




炎耐性をもつ魔族はグリルパーティーの続きがしたいようだ。




「アカーン!!きかへんぼっさん」




「せやかてアイリはん」




「我におまかせを」




電撃の魔法で亀をこがすラムゥト。




「ぐぇぐぇぐぇ・・・」




バタリと倒れ込む魔獣。消え去った姿からは魔石と財宝がのこされていた。




「さっすがラムゥトさん!愛してるぅ!」




「御身のままに」




「さっそく財宝を清算しましょう!」




モスクベルグを後にしようとしたその瞬間。




ホンココンボ兄弟が魔石から復活したのだ。




「許さんぞ人間風情がああああああああああ」




ラムゥトはすかさず電撃の魔法をはなった。




「がああぁぁあああ」




しびれながらもなお立ち上がろうとする魔獣。




アイリは与作とゴブリベンジャーをふるい二頭の頭をきりとった。




倒れ込む魔獣。




冒険者ギルドのエンブレムが光、金等級へと進化した。




「たいしたことなかったわね」




雪姫はアイリをなでながらそういうとホークアイがつくった猫茸弁当をむさぼった。




「報酬で金貨300枚がでているわ」




ぼっさんとシェイクハンドするアイリ。残り200枚となった借金に喜ぶ二人。




金等級にあがったエンブレムをみながら魔獣の残骸を分解し素材へとかえた。




金等級となるとクエストの種類も豊富になり多岐にわたる選択肢がでてくる。




借金返済にはもってこいのタイミングだった。


金等級になったアイリ達はパーティメンバー補強を行うことにした。




「ヒーラーが圧倒的にたりんぞ!パーティといえばヒーラーぞ!盾はラムゥトさんにお願いできるし」




「せやな。ヒーラーがおらんと始らへんわ」




パーティ募集の張り出しをしてみたのだが結果。




「くっくっく我をよんだかな諸君」




キラっと目を輝かせながら眼帯が疼くと主張している変人が一人だけ応募してきた。




「あぁー神よぉ!我さだめジャスティスによって運命をさだめられしパーティの諸君よヒーラーがまいったぞ!」




大げさなポーズをとりながら彼は名乗った。




「癒しの神に選ばれしダークプリーストテツオさまがな!」




キラキラとした防具にとがった靴マジシャンがもつような杖を片手に胸をはる。




「なんか変なのがきたな」




「変なのとは失敬なこのテツオ様がまいったともうしておるのだぞ!」




「いやーちがうんだよなぁもっと可愛いプリーストをイメージしてたん・・・」




「フゥーハハハ!われこそは七天魔王が一人ダークプリーストのテ☆ツ☆オ様だ!」




「そこの女子よぉ我ヒールうけるがよい。暗黒に目覚めし鉱石の破片をつかい治癒してしんぜよう!」




「ダークヒーリング!!!」




ものすごい勢いで周囲の魔力が収束する。




「あぁあぞぞぞと感じるぞい!いい!!すごくいい!」




ぼっさんは共鳴するかのように魔力を高め始めた。




「いえてる!私の心の傷がいえていくのがわかるの!」




黒歴史がきえていくそんな感覚が心をよぎっていった。




「最高にハイッてやつだあああああああふぉおおおおおおおおおお」




ダークプリーストはアイリの黒歴史を覆いつくすほどの中二病オーラでアイリの心を癒した。




「採用!きみにきめた!ダークプリーストのテツオ!」




「さんをつけろよデコすけ!!!」




「テツオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」




ダークプリーストのオーラがきえるとマントをひらめかせた。




「よろしい。ならば戦争だ」




「くりーくくりーく!」




なにやらネタがかみあっているようで、アイリは新メンバーを心よく迎え入れることにした。

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