なぜ武士道は死ぬことと見つけたるのか

城を枕に切腹するはずだった八剣十兵衛は、『死の律』によって祝福【呪い】をかけられる。自らをハーデスと名乗ることにした『死の律』は、なぜ不死を与えた存在すら最期には死を望むのか、武士の十兵衛がなぜ死によって忠義を示そうとするのか、その納得できる理由を聞き出そうとしていた。そして異世界における二人の旅が始まる――。

己の命を懸ける侍×死を司る超常の存在ということで、実にワクワクする題材でした。
生真面目な十兵衛と、超然としながらもどこか天然っぽさや可愛らしさを感じるハーデスのコンビがとても魅力的です。二人の力で敵に立ち向かう場面は、王道のバディものといった感じで歯車がガッチリ噛み合っていました。
『命』『生』『死』というテーマからブレることなくお話が展開され、ストーリーのテンポや情景描写や演出、キャラの個性や会話劇といった、様々な部分で破綻のない上質な作品だと感じました。これで初投稿とは思えない技量の高さです。10年以上前の僕の初投稿作より遥かに上手いです。

課題を挙げるとするのなら、日本刀を使ったバトルシーンをもっともっとスピーディだったり、「命の奪い合いをしているんだな」と読者が緊張するほど、迫力溢れるものに書いて欲しいです。そうすれば更にハイレベルな作品に仕上がると思いました。
剣術シーンってめちゃくちゃ難しくて大変なのですが、せっかくサムライを主人公に据えているのですから、是非とも挑戦して頂きたいです。

とはいえ目立った短所というわけでもなく、一章のまとめ方が綺麗で最後の演出も個人的に感服しました。二章は山村から都市へと舞台が移り、今後の展開にも期待が持てます。

もっと評価されても良い作品だと思います。
旅路の果てに十兵衛とハーデスはそれぞれの『答え』を見つけられるのか、非常に気になりました。

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