――何故、自ら命を絶つか。
主君の城を守れずに、自責から自らの命を断とうとする男――八剣十兵衛の前に現れた、『死の律』と名乗る男。こうして、死ぬことが出来ない【呪い】を掛けた彼と、異世界で神になって主君に挽回を求める十兵衛の異世界での旅路が始まった。
丁寧かつ分かりやすい第三人称で描かれる彼らの旅路は、まるで実際にあるかの様に、全てが色鮮やかであり、キャラも丁寧に書かれており、全員が主人公と思うくらいである。それ故に、協力して敵を倒すというシーンは本当に胸熱で、手に汗握ってしまう。
緩急の付け方が非常に上手であり、シリアス一辺倒という訳でもない。
だが、ちゃんとシリアスな展開になればシリアスに。クスッと笑ってしまう所は、本当に愉快気にと、ストーリー展開も遅くなく、また一話の文字数も3000と一、二分で読めてしまうので、気づけばサラサラと読んでしまいます。
主人公の十兵衛は、【次元優位】という特性上、異世界では無類の強さを発揮するのですが、『侍』である以上、敵に情けを掛ける事もあれば、賞賛する事もあり、なろう特有の『イキり』は無い。無自覚という訳でもないので、ストレスフリーで読めてしまう。
また、この物語はバディ物要素もあり、前述した『死の律』ことハーデス。
彼と十兵衛の仲もまた良い関係へとなっている。
最初こそは自らに死ねない呪いを掛けた張本人として険悪な雰囲気だったが、気づけば知らず知らずの内に仲良くなっている。
口喧嘩をしても、本心では互いの事を理解しようとする二人の関係は尊さそのもの。
私の推しキャラは第三章で登場する『リン』ちゃんです。
存在自体がネタバレになるため、あまり詳細は言えませんが、彼女の明るい精神とキャラ属性に惹かれてしまいました(笑)
切腹から始まる物語に息を呑む。
死を望む十兵衛とそんな彼を死なせないハーデス。
これは命を問う物語である。命を問い、自らに問いかける物語だ。死ねなくなった体を厭いながらも十兵衛はハーデスと共にぶつかり合い、協力しながらお話は進んでいく。二人のやり取りは重々しくもあるが時に軽快に笑わせてくれる。
重い題材を扱いながらも、所々に挟まれた笑いが緊迫する物語を解きほぐしてくれる為に読む手が止まらなくなる。
重々しいだけではない、熱く、すっきりする展開もある物語は読み終えた後も彼らの世界の中を見つめている感覚になる。
十兵衛とハーデスだけではない一人一人の命の物語が丁寧に、深くまで描かれた物語は最後まで読むとこの世界に住む人たちがより一層、好きになります。
今を生きる彼らを追いかけたくなる物語です。
作品の命題は「なぜ、人は死を選ぶのか」
重く骨太なテーマです。文章もしっかりとしたものであるために初見はとっつきにくいムズカシイ物語に思われるかもしれません。
みなさん、そんなことはないです。騙されたと思って第6話のタイトルを見てください。
見ましたね? 完全なシリアスオンリーの作品では決してつかないサブタイトルです。
私はこの第6話で喜劇に見舞われました。
そう、電車の中で読んでしまっていたのです。何が起きたかは想像の通りです。
この冥王と侍はシリアスとコメディ両方が極上なのです。冥王を十兵衛のツッコミは一刀両断。テンポよくバリエーションにとんでいて笑いを誘います。けれど、スッとシリアスな展開にも移行します。第8話はシリアスな展開として、薬草売りの嘆きは胸に深く刺さります。この嘆きはたった数行です。でも、深く深く刀のように鋭く突き刺さるのです。
十兵衛と冥王の掛け合いに注目すると最高のバディものであることにも気づけます。
ほんと、十兵衛はいい男です。
是非読んでください。面白さは保証します。
十兵衛は城を守れず仲間と共に切腹をしようと思った。
しかし、切腹の寸前、謎の存在に切腹を止められてしまう。
謎の存在は、死神、魔神、死者の王、冥王と人々から呼ばれ、死の律を司る者であった。
冥王と侍、二人の出会いによって物語が始まる。
十兵衛とハーデスの掛け合いが面白いです。
最初は殴り合いをするほどでしたが、十兵衛がハーデスを理解するほどになりました。
また、ハーデスの力は絶大。死の律であるからこそ、奇跡が行えます。
一章終盤の力は圧巻でした。
この作品は面白さが魔物との戦いから加速すると私は感じました。
物語のスピード感が増します。
そして、一章の終わりには二章が気になるような登場人物が一気に出てきます。
非常に丁寧な文章の物語で魅力的です。
是非読んでみてください!!
何故に自ら命を絶つか。
潔く散ってこそという侍と、与えられた命を捨てることを理解できない冥王と、そんな二人の旅路である。
こう書くとシリアス一辺倒のように映るかもしれないが、そんなことはない。シリアスなところはシリアスに、コミカルなところはコミカルに、程よい塩梅で織り混ぜられて、緩急ある作品に仕上がっている。
命とは何か、生きるとは何か。侍たる十兵衛の口から語られる言葉は時に重く、ずしりと来ることもある。
いつか終わりを迎えるその時に何を思うのか。彼らが旅路の果てに見つけるものを見届けたく思う作品です。
異世界のキャラクターたちも皆魅力的。ぜひご一読ください!
城を枕に切腹するはずだった八剣十兵衛は、『死の律』によって祝福【呪い】をかけられる。自らをハーデスと名乗ることにした『死の律』は、なぜ不死を与えた存在すら最期には死を望むのか、武士の十兵衛がなぜ死によって忠義を示そうとするのか、その納得できる理由を聞き出そうとしていた。そして異世界における二人の旅が始まる――。
己の命を懸ける侍×死を司る超常の存在ということで、実にワクワクする題材でした。
生真面目な十兵衛と、超然としながらもどこか天然っぽさや可愛らしさを感じるハーデスのコンビがとても魅力的です。二人の力で敵に立ち向かう場面は、王道のバディものといった感じで歯車がガッチリ噛み合っていました。
『命』『生』『死』というテーマからブレることなくお話が展開され、ストーリーのテンポや情景描写や演出、キャラの個性や会話劇といった、様々な部分で破綻のない上質な作品だと感じました。これで初投稿とは思えない技量の高さです。10年以上前の僕の初投稿作より遥かに上手いです。
課題を挙げるとするのなら、日本刀を使ったバトルシーンをもっともっとスピーディだったり、「命の奪い合いをしているんだな」と読者が緊張するほど、迫力溢れるものに書いて欲しいです。そうすれば更にハイレベルな作品に仕上がると思いました。
剣術シーンってめちゃくちゃ難しくて大変なのですが、せっかくサムライを主人公に据えているのですから、是非とも挑戦して頂きたいです。
とはいえ目立った短所というわけでもなく、一章のまとめ方が綺麗で最後の演出も個人的に感服しました。二章は山村から都市へと舞台が移り、今後の展開にも期待が持てます。
もっと評価されても良い作品だと思います。
旅路の果てに十兵衛とハーデスはそれぞれの『答え』を見つけられるのか、非常に気になりました。