第3話【1】彼は僕の神様 -3-

 俺は、廊下を歩く視界に入った高島を、衝動的に追いかけた。

 一人でいる。

 計画実行。


「ねえ、

 大事な話があるんだけど、ちょっといいかな?」

 ふいに、距離を極端に縮めて、じっと彼女を見つめる。

 明らかに戸惑っている。

 もうひと押し。

「出来れば、二人きりで」

 距離の近さに赤面する彼女。

「え?うん・・・

 別にいいけど・・・」




 誰もいない視聴覚室。

 俺は、一番近くのカーテンを閉めると、彼女に近づいた。

「ねえ、俺さ、

 君の事、気になってるんだけど・・・」

 言って、彼女の頬に触れる。

「彩月じゃなくて、

 俺じゃ、だめ?」

 彼女は顔を真っ赤にさせて戸惑っている様子はあれど、強く拒否するでも無い。

 まんざらでも無いってとこか。

 さらに、

 もうひと押し。


「キスして、いい?」


「え?え?」

 強い抵抗は無い。


 カシャリ、と。

 俺はスマホのシャッターを押す。


「簡単だね・・・」

 

 俺は、あたかも唇が触れてるような角度の写真を、彼女に見せる。


「これ、彩月に見せていい?

 それとも、SNSで拡散?」


 慌てて彼女は俺のスマホを奪おうとする。

 背の高さも圧倒的に違い、俺はサラリとそれを交わす。


「酷いっ、騙したのねっ!?

 何で、こんな事するの!?」

 と、涙目の彼女に、うんざりしながら俺は言い放つ。


「誰でもいいんだったら、

 彩月じゃなくても、いいよね?」

 




「永・・・

 どうしたの?どこ行ってたの?」

 と、彩月が俺に駆け寄る。

「トイレ・・・」



 戯れ付く仔犬みたいに、

 彩月は俺を盲信していればいい。

 俺の気持ちなんて、こいつは一切考えてなどいないんだから・・・。

 ホントは、神様なんかじゃない。

 嘘と虚栄で塗り固めて、誰かの神のふりをする。

 いつか、俺にがっかりするのかもしれない。


 苛立ちの理由を、本当は知っている。

 それは、嫉妬心だったり、独占欲だったり。


 でも、きっと俺から、

 好きだなんて言わない。


 そして、これからも俺は、

 ズルい手口で、

 こいつを束縛して、


 手放す事はしないんだろう・・・。


 

 王子のふりをして、


 神のふりをして。








ーto be continued

 next, another storyー

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