第5話【2】君はアイドル -2-


 順番に握手やサイン、チェキ撮影などをする。

 名前を間違えないように、笑顔で愛想良く。

 ああ、カネキチさんが見えた。

 うんうん、いるよね、いつも必ずっていう、ある種の安心感?

 あれ?今日は女友達と一緒?

 ステージからは全然気づかなかった。

 だって、彼はいつも私だけ見てるから。


 ついにカネキチさんの番が来る。

 私は両手で握手をしながら、

「わあ、カネキチさん、今日もありがとうございますぅ!」

 語尾にハートマークを付けるように話す。

「ユカリン!

 今日の新曲は何だか切なくて大人な感じが凄く良かったよ!」

「そうなんです、片想い、切なくて」

「ユカリンに、片想いなんて関係無さそうだけどね。 

 あ、友達連れて来たんだ。

 彼女、ユカリンに憧れてるみたいで・・・」

 と話しながら、握手は彼女に移行する。

「それは、ありがとうございますぅ!」

「わぁ、ユカリン、顔小さいし、白くて肌綺麗だし、ほっそーいっ!!

 お人形みたい、神的に可愛い過ぎるっっ!!

 私、ユカリン目指して頑張ります!」

 と、彼女が言うと、カネキチさんが、

「まあ、マミは足元にも及ばないけどね」

 と謎に答えると彼女は可愛らしく怒る。

「もうっ、

 どうせどこも敵わないよっ。

 憧れるのは自由じゃんっ」 

 私は笑いながら、

「マミさん、充分可愛らしいじゃないですかぁ。

 来てくれてありがとうございますぅ」

 って謎にフォローしつつ、一瞬の握手が終わる。

  

 何だか謎にイラッとした。

 ただでさえ短い握手時間を邪魔されたようで。

 いや、ここは売上に繋がるなら、女子でも例え彼女でも喜ばしい事なんだけど・・・。


 くだらない。

 この私が、ファンの女友達の事を気にする事なんて全く無いはずだ。

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