第6話【2】君はアイドル -3-

 狭い楽屋でメイクを落としながら、私は柄にも無くSNSをチェックした。

 完全プライベートなアカウントしか持っていない。業務用宣伝アカウントを持つようにマネージャー兼スタッフに言われてるけど、キャラがブレたり誤爆しそうなのが面倒なので手を付けて無かった。

 でもカネキチさんのアカウントは知っていた。

 たまにライブの評判のエゴサだけはしていたし。

 彼のアカウントに『マミ』との今日の写真が上がっていた。


『今日もユカリンライブ、最高でしたー!!

 やっぱり唯一無二の女神です』


 とのコメントのわりに、マミとの距離が近い。

 カネキチさんのアカウントからマミを検索してみる。カネキチさんの相互フォローの数が少なくてすぐに見つかった。

 謎に口元だけ隠したアカウント写真。


 マミの最近の投稿。

『念願のユカリンの初ライブでした。

 大好きなカネキチさんと(ハート)』


 さっきの写真より、顔が近くて、頬が触れそうな距離だった。明らかにマミからカネキチさんに寄ってる。


 はぁ!? 

 大好きなのは、カネキチさんかよ。

 私のライブの感想は一言も無くて、大好きなのは、カネキチさんかよっ。


 無性に苛立つ。


 ライブに来たやつらは、

 私だけ見てればいいのにっ。


 って、自分でも不条理な要求だし、

 決してそんな事口に出したりしないけど、

 心で、強く思った。


 私はかわいいんじゃなかったの!?

 カネキチさんも、マミも、

 私だけを崇拝してろよっ!!


 ステージではアイドル気取ってるけれど、

 一度ステージを降りたら、ただのフリーターの女の子だ。

 神でも、お人形でも無いし、

 偶像を目指す、ただの女の子でしか無かった。

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