諸君、脱帽したまえ。彼女は天才だ。

 天才というよりかは天才性も込みで何度も前線で活躍してきた凄腕の熟練兵といった方向性の凄さなのですが、とにかく凄い。全体的に凄い。ジュージさんに惜しみない拍手を。
 小説って90%の出来とか100%のクオリティとか言うと凄いように聞こえると思うんですが、この『巣』に関してはそれ以上、120%の素晴らしさでした。ただ単に上手いとかそういう話ではなく、読者の情緒に刺し込めるものや何度も襲い掛かってくる上質の恐怖とか驚異的なまでの読みやすさとか、完璧では留まらない作品としての武器がこの小説には沢山あるんです。こういうのを書けるのが羨ましいという感想より先に「凄い……」というのが出たので、読み終わってからしばらくはポケーっとしてました。

 あと、変な前印象が付くのは宜しくないと思うのであまり多くは語りませんが、鬼頭さんというキャラクターがめちゃくちゃ魅力的でした。

 他に印象的だったのが、応援コメントで「幕間が唐突」って仰ってる方がいらっしゃって、はじめ私は「そう見える人もいるのかー」くらいのぼんやりした気持ちでいたのですが、読み終わる頃には「幕間めっちゃ良かった」「もう幕間が最高だった」という感想に傾きました。幕間が後半になるにつれてめっちゃくちゃ効いてくるんです。ネタバレになるので細かいところは申し上げませんが、小説の最終的な構造を見定める計算力、もしくは後々から方向を整える上手さが常人とは段違いに秀でていらっしゃると思いました。

 あとほとんど全てのエピソードに見せ場と次回への引きがあるのが強いです。「これからどうなっちゃうんだろう?」と予想しながら読んでいったのですが、とても楽しかったです。

 取り敢えず読んでください。一旦ペースに入ったらスラスラ読めるようになると思います。めちゃくちゃ怖かったし、めちゃくちゃ面白かったし、めちゃくちゃ切ない小説でした。

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