オシカツ。

メイルストロム

推し

 多分、誰にだって推しはいる。

 推しと言われるとなんだか凄い熱量を求められてしまいそうだけれど、実際はそんな事無い筈です。ただ好きだと、そう言えれば良いと思う。

 アイドルだっていいし、歴史上の偉人だって良い。なんならゲームやアニメーションのキャラクターだって良いんだ。実在非実在関わらず、そのキャラクター性や生き方を好ましいと思えれば良いと私は思っている。


 ──そんな私の推しは、フローレンス・ナイチンゲールだ。

 光掲げる貴婦人、クリミアの天使などの呼び名があるあの御方。医療系の学問に興味がない人も、彼女の事を漫画や某ソーシャルゲームで見かけた事くらいはあるのではないだろうか。


 ──天使とは美しい花を振り撒く者ではなく、苦しみあえぐ者のために戦う者のことだ。


 これはナイチンゲール女史が残した言葉の一つである。

 諸兄らは白衣の天使と聞いてどんなイメージを抱くであろうか。もしも優しく慈しみに満ちた優しい女性像をイメージしているのなら、残念ながらそれは間違っていると言わざるをえない。そう言った側面もあったのかもしれないが、女史の本質は苛烈なものだ。

 女史がどういった人物だったのかは、各自で調べていただけるとありがたい。女史についてここで述べるには、あまりにも字数が足りないし本件のテーマから逸脱してしまう。


 さて、私が女史を推している最大の理由はその生き方と考え方にある。

 女史の時代における看護師は、病院にて病人の世話をする単なる召使として見られており、専門知識の必要がない職業と考えられていた時代である。言葉を選ばずに言えば、看護師など不潔でだらしない仕事と見なされていた。それに加え、女史のような上流階級の女性は仕事をせずに結婚して家庭に入る事が当然と考えられていた時代です。

 それらを理解した上で自らの意思の元、看護師の世界へと単身飛び込んだのです。様々な事を経験しても尚、折れること無く理想へ向かってひたすらに努力し越えてきた女史の生き方には、何度も励まされてきました。


 そんな女史の遺した言葉には、今の時代にも通じるものが多くあると信じています。

 例えば、犠牲なき献身こそ真の奉仕。

 昨今、働き手の無償の自己犠牲に期待するような案件を多く見かけます。よく聞くボランティアがそれに当たるのでしょう。ボランティアの精神自体を否定するつもりはありません。ですがよく考えて下さい。無償の働きで救われる対象にご自身は入っていますか?

 貴方を磨り減らしてまで尽くす必要は無い筈です。

 あくまでも私達が心の中にたてる誓いのようなものであり、他人から望まれるものではない筈です。

 私達は然るべき勉強や経験を積んでそこに立っているのですから、クライアントや組織もそれを認めてちゃんと報いなければ両者の関係は破綻します。


 他にも色々と語りたい思いはありますが、それこそ止まらなくなりますので今回はこれくらいにしておきましょう。


 最後になりますが、私は女史のグッズ等をこれといって持ち合わせておりません。関連する書籍もそれほど多く所持しておりませんが、女史は私の推しなのです。

 もしも推しがいないというのなら、これを機に探してみては如何でしょうか。いつか何かに押し潰されそうになったとき、推しによって救われることもあるでしょう。もしかすると、新たな繋がりを生むきっかけになるかもしれません。


 それでは、良き人生を──







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