こちらは短編集となっており、その雰囲気は全体的にシリアスでダークな仕上がりとなっています。
7つのお話が綴られているのですが、その中でも私は『勇者』『リブラリア』『猫』がとても好きです。
7つのお話それぞれ、切なさの残るハッピーエンドだったり、バッドエンドかもしれないけど心に残る暖かさがあったり、思わず自分のことのように考えてしまうものだったり、それぞれ奥行きがある素晴らしい作品集となっています。
読んでいて、作家さまの描かれる世界が分かるというか、ただのハッピーエンドじゃ終わらせない、終わらせたくない、という独自の考えがひしひしと伝わってくるような、きちんとどの世界でも厳しい『リアル』を描かれる方なんだろうな~と素人なりですが、感じてしまいました。
個人的にこのような作風が大好きなので、また他作品も読みたいなと思っています。
奥深いダークな世界を堪能されたい方にぜひ触れて読んでいただきたい物語集です。
追記:「短録.綿津見の原に往く」、悲恋物語なのですが、そのカップルがとても尊く、美しく、切ないのです……。もうめちゃめちゃオススメですのでぜひ読んでみてください!!
静謐かつダークなトーンで綴られる短編集です。
一話完結のため手に取りやすい一方、一つ一つの物語にずしりと重さがあります。
自分ではどうにもならない運命の中で足掻く者。
気の遠くなる時間、わずかな絆を求め続けた者。
永遠を望む心の淵に堕ち、進む道も戻る道も失う者。
登場人物たちは皆、儘ならないものに翻弄されます。
彼らは何に惑い、あるいは憤り、そして何を信じるのか。
言葉として表されたものの奥に、文と文のわずかな合間に、それらは見つかるかもしれません。
私は特に『インドラの網』がとても好みでした。
あなたもぜひ、お気に入りの物語を探してください。
色々な物語が詰まった短編集作品です。
文字数は少ない物語ですが、ページ数が少なそうだと思って手に取った本が、ズシリと見た目より重かった、みたいな感じです。作品から感じる色も、鉛の色を感じるかもしれません。ダークファンタジー路線と言いますか、全体的に硬質で冷たい。そしてこの予想外の重さという事で、この短編集はページが鉛で出来ている、と表現したいと思います。
何処か刹那的な哀しさがあり、寂しげな空気。そんな雰囲気の中に、血の通った人間の姿もあり、行間を思わず読まさせられるという部分もあって、短編でありながら、心に残る物語ばかり。
登場人物も印象に残ります。
タイトルのライブラ(天秤)は”短録.リブラリア”の中に出て来る図書館の名前でもあります。完結はなく、これからも物語は紡がれ、この図書館の蔵書は増えていくでしょう。
そう考えてしまうと、この”短録.リブラリア”のラストが怖いものに感じる等、読者が少し想像力を持つと、物語が一気に長編のふり幅を持つという。
ぜひお読みください。
勇者を読ませていただきました。
【物語は】
強いというだけで人間から疎まれ、殺されそうになる魔王が主人公。自分自身のことをよく知っている魔王は、人と関わりを持たないように配慮をしながら生きている。しかし、弱き者である人間は彼女が強いというだけで、勝手に恐れ亡き者にしようとしていた。
まるで多様性を認められない社会の、縮図のような物語。
人間とはとても身勝手な生き物。自分と違うというだけで排除しようとしたり、自分の価値観を押し付けようとしたりする。だが一人一人は違う生き物であり、長所もあれば短所もある。そして、その長所が万民にとって長所とは限らないこともあるし、人によっては短所を長所と感じることもあるだろう。本来、尊重しながら生きるべきであり、認め合い助け合って生きていくべき。そんなことを考えさせられる物語である。
主人公は、平穏な日々を暮らしたいと願いながらもそれが叶わずにいた。そんな彼女にとって向日葵という花は、特別な花であった。
【この物語から、暗に感じるもの】
この物語には、いろんなメッセージを感じる。多数で向かって来る勇者とは、イジメ問題を指しているのではないかと感じたり、その中での一人で向かって来る勇者とは、家庭内での虐待を仄めかせていたりと直接的ではないものの、多様性についてや社会問題を連想させる物語だ。
【物語の魅力】
この物語には、文字ならではの表現法が使われていると思う。同じ言葉を繰り返すことによる、気持ちの強さ。行動による憎しみ、悲しみの表現など。心情がしっかりと書き込まれていることにより、感情移入しやすく同調もし易い。人によっては胸が押しつぶされそうな気持になったり、喪失感を味わうこともあるだろう。それほどまでに、主人公とある勇者との出会い、その後も丁寧に描かれており、主人公の想いも伝わってくる作品である。
【登場人物の魅力】
主人公は、勝手に人から魔王と呼ばれていただけで平和を望んでいた。誰も殺したくはなかったし、誰も傷つけたくもなかった。そこに現れた勇者は、孤独な彼女を癒した。誰にも産まれて来たからには生きる権利があるはず。何もしていない彼女から、勝手に恐怖を感じ命を奪う権利は誰にもなかったはずだ。この主人公は、自分の心を癒した勇者と平和で穏やかな日々を願った。それを貫いていた。それが奪われた時、きっと彼女は誰よりも人間らしい感情で、悲しみを払おうとしたに違いない。だが、その行動に意味がないことも気づいている。彼女の真の強さは、なんだろうかと考えさせられる。
【物語を通して】
あなたはこの物語を読んで、何を思うだろうか?
魔王と勇者の物語と感じるだろうか?それとも、社会問題を思わせる物語と受け取るだろうか?人によって感じ方は違うものの、強いメッセージ性を感じるに違いない。
どうすれば結末を変えられたのだろうか?
そんなことを考えてしまう物語です。とても心が揺さぶられる作品だと思いました。是非あなたも、お手に取られてみてくださいね。
ここは古の図書館です。
あなたの好きな本、好きな物語、好きな伝承を読めます。
どんな国の物語も、どんな時代の物語も読めますよ。え、未来? 残念ながらそれは取り置きがないかなぁ。
でもね、伝えられし物語の中に、もしかしたら未来があるかもしれないよ。読んで何を得るかは、あなた次第。きっと何にでも、応えてくれるはず。必要な対価さえ払えばね。あ、それだと図書館じゃなくて本屋さんかな? でも古くて広くて誰でも何でも読める雰囲気は、図書館なんだよね。古の。
巻物とか石板とか見つかったりしてね。もしかしたら見つけるのはあなたかも? そんなワクワク感を持って、図書館を巡るのも楽しいですよね。
さて、かくいう僕は何を見つけたのか。
それは、ナイショ。