第11話 きちんと

 暁夫は目を覚ました。正確には、目を開けた。しかし虚ろなままである。直ちに医師が駆け付けた。医師は家族に、今後の展望を述べた。それは先にも説明されたことだった。この様子を見る限り、暁夫には重い後遺症が残っている可能性が高い。一生介護が必要かもしれない、ということだった。


 医師が出て行った後、母親は静かに呟いた。

「暁夫ちゃん……まさかこうなるなんて……。ああ、医者になることの素晴らしさについて、私がもっときちんと教えておけば良かった。そうすれば……そうすればこんなことにならなかったのに……」


 暁夫の目は、しかし、最早何も捉えてはいなかった。

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