平凡な少年と大怪異のバディが挑む、ホラー×ミステリ×異能バトル!

平凡な15歳の主人公・有栖川莉玖は、在る事件をきっかけに手紙の怪異【呪念の手記】――新谷先輩こと新谷夜弦と魂が繋がってしまう。
以来、様々な怪異と遭遇する羽目になった主人公が、怪異の力と咄嗟の機転、新谷先輩との信頼関係を武器に次々と窮地を切り抜けてゆく、バトルホラーというか怪異バトルというか、そんな導線のお話です。

主人公の莉玖くん、先ほど「平凡な15歳」と表現しましたが、嫌がりながらもなんのかんの怪異に立ち向かう胆力と、それ以上に怪異を払う時に見せる起点と発想力に、毎回「そう来たかー!」と唸らされています。
ひとこと紹介で「ミステリ」の一言を入れたのはこの辺りが理由で、短編連作の形式でこれをできるのはすごいなぁと感嘆の息をつくばかりです。
善良で、胆力があって、たとえ怪異相手であったとしても、一度絆を結んだ相手には、曇りのない信頼を寄せる。
ひとりでは平凡な少年かもしれませんが、とても主人公らしい、かっこいい主人公です。純粋に怪異退治のバディものとして見ても面白いおはなしです。

しかし、バディものとして面白いばかりではありません。
ホラーとしてもしっかりした骨太の仕上がりで、現れる怪異は時にグロテスクさを伴いながら、どれもゾッと心胆寒からしめる恐ろしい存在です。
であればこそ、どのエピソードも胸の内側を撫で上げられるような緊迫感、そして怪異に立ち向かうスリルを味わえるのですが。

よろしければ、まず、どうかファーストエピソードを。
【呪念の手記】の物語を読んでみてください。

サクッと読める短編くらいの長さですが、切れ味のいいお話です。そしてここで刺さるものがあれば、その後のエピソードも間違いなく楽しめます。
是非、お手に取ってみてください。

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