人間の先入観、盲目。読者もこれは騙される

葬儀社を舞台として起きる、ご遺体が入れ替わった謎を解くミステリー。作者の経験がいかんなく発揮され、葬儀を執り行うまでの裏側が丁寧に描かれている。
話は入り組んでいるように見えるかもしれないが、きちんと答えが提示されていくので難解ということはない。むしろ解決編はかなり丁寧で、前に起きたことを思い出しやすい描かれ方をしている。
人間には先入観というものがある、想像力がある。誰かが夜道で転がる白いビニール袋を幽霊だと悲鳴を上げた時、隣でそれを聞いた人も幽霊がいたと思い込むように。
そんな先入観や盲点をうまく扱い、事件の発生から解決へと導いている。
主人公は名探偵ではない。けれど一生懸命で、応援をして一緒に考えようという気持ちになる。彼が走り回り、考え、読者と共に驚いてくれる。
ぜひとも読んでいただきたい一作です。

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