三章 悪魔討つ者と、時を駆る本たち

第9話

 論文の提出を終え、美味しい昼食を食べ終えたら、人だらけの支部をさっさと出て、せっかくの外出を謳歌おうかするために、私はたいてい近くの図書館へと足を延ばす。


 この町には、国際魔法協会が管理運営を行う『国際魔法協会図書館International Magic Society Library』が二つ。あまり知られていないが、何処ぞどこぞの老魔術師が運営している私立図書館が一つ。


 私が行くのは後者である。この図書館は、国際魔法協会によって禁書目録に指定されている本たちを集めた図書館で、何人かの魔術師や研究者が、珍しい資料を求めて利用している。


 国際魔法協会は国ではないので、その焚書目録に法的な権限はない。ただ、こういう魔法協会が作った町の中なら、逮捕ができなくても、本の取り締まり、つまり没収ができるので、細心の注意を払い、知ってる人しか入れないようになっている。


 私はパンを食べ終えるとローブに付いたパンくずを払い、立派なドアを開けて国際魔法協会支部を出ると、その足で図書館へと向かった。もう日は頭のてっぺんに来ている。


 太陽がまぶしい。



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