第11話

 本を読み終え、見返しをめくってパタンと本を閉じると。私は現実の世界に引き戻されたようなものを感じた。


 突然世界が元通りになっていく。本の香り、雰囲気。そして本たちが放つ気配。そして図書館の館長であるお爺さんが本を読む音。


 私は本を棚に戻した。そして静かに歩いてドアの前に立つと、老人に礼を言った後、ドアを捻って外へ出た。老人は、きっと私の礼を聞いていないだろうし、私が来たことも覚えていないだろう。


 本好きの読書中の集中力は、すさまじいものがある。


 外に出て家と家の隙間から細い空を見上げると、空を歩く雲が紫色に染まっていた。もう夕方だ。早く帰らないと、夕食の時間に間に合わない。


 私は慌てて路地を抜けると、大通りを地面を踏みしめて歩き出した。

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