第6話

 大体だいたい十分弱ほど歩くと、この町の中央広場、まあ名前の通り町の中央に着く。広場は円を描くように滑らかな石畳がひかれていて、所々に木製のベンチや、街路樹が植えられ、穏やかな市民の憩いの場となっている。


 この町の構造は、大通りが四本、その中央広場を中心に十字に広がっている。気づいた人もいるだろうが、こういう碁盤の目のような整った構造の街は、計画して作られていることが多い。


 私たちの住む町は、計画して作られている。計画したのは、国際魔法協会。この町は、彼らによって作られた。


 そして広場の中央、円形に広がる滑らかな白の石畳の円の中心に、巨大な石造りの建物。そう。そこに私の目的地、国際魔法協会の支部がある。世界最大の規模と権力を持った団体。おそらく、やる気になれば国だって滅ぼせるだろう。


 そんな団体なら、町の一つや二つ簡単に作れるだろう。ぞくっぽい話だが、実際、町はもうかる。税をとったり、インフラを管理して利益を得たり、食料生産をこっちで管理してしまえば町民はそれを買うしかない。その他にも、金を作る方法がたくさんある。


 だから彼らは、たくさんの街を作っている。そのおかげで住む家を手に入れた飯に困っている人もいるため、一概によくない事とは言えない。いつの時代も、物事は多面的。単純ではないのだ。


 何ヵ所もの優秀な研究所や魔術師を抱え、大量の魔導兵器を所有する国際魔法協会。


 魔法研究を牛耳っているとか、魔法学発達の最大の重石などと批判されることもあるが、おかげさまでここ百年余り魔導兵器と言われるものが戦争に使われることはなくなった。


 それにより、戦争での死者数は劇的に減少した。戦争で、どれだけ魔術が役に立っていたかを浮き彫りにした。皮肉な話だが、兵の損耗率が減ったから、戦争が簡単にできるようになり、戦争の数は増えた。戦死者数の合計は、結局あまり変わらなかった。


 昔、ある魔術師が『人は歴史から学ばないと言うことが、人が歴史から学んだ唯一の事実だ』と言った。全くその通りだと思う。


 国際魔法協会ができたのは大体二百年ほど前。そのころ、当然、この町はなく私はこの近くの治安のあまり良くない町に住んでいた。


 国際魔法協会を指揮しているのが誰なのかは現代まで謎に包まれているが、相当な量政府機関に通じるパイプがあることは間違いない。国際魔法協会の勢力範囲は一瞬で全世界に広がった。


 国際魔法協会は多くの研究所を作り貧乏研究者にパンを与え、研究論文が簡単に提出できるように、システムを整備し、多くの支部を作り、多くの街を作った。


 ここもそうして作られた町の一つだ。引っ越しを考えていた私は、近くにできたこの町に引っ越すことにした。そして、この町にある孤児院で、コナーに出会った。


 私はいつまでも回想していても仕方がないと首を振り、オーク材の立派な扉を押し開けて、この町のシンボルである国際魔法協会支部の敷居をまたいだ。

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