神なき最果てに信仰と秩序を。此処なる魔界に幼き聖女の導きを打ち立てよう

※ひとこと紹介のところ、もしかしたら「本作はそういう話ではなくなくない?」というツッコミがあるかもしれませんが。作中のあのシーンが好きなもので…ということで、どうかひとつ。


ペルクスの、世界に対する向き合い方が好きです(※直球)

物語の概略はあらすじを見てください。そこに過不足なく書いてあります。
そのうえで。

禁忌を犯した罪で「神に見放された土地であり死後の安寧はない」とされる魔界へ追放されたにもかかわらず、復讐とか既存の秩序をぶち壊すとかの方向ではなく――煎じ詰めれば、カモミールが優しいよい子だったから、というところに集約される部分もあるのかもしれませんが――カモミールを「聖女」という立場にぶち上げて、「魔界においても神は信じる者を見守っている」という新しい信仰と秩序をぶち上げる。
この、信仰なんかクソ食らえ、とか、秩序なんて邪魔くせえものぶち壊してやるぜー、みたいな形じゃなく――それはそれとしてペルクスは真理の探究が優先事項っぽいので割とエッジの尖ったところもありますが、そのうえでなんだかすごく器用に世界と「折り合っている」、そのスマートさを魅力的に感じます。

魔界を探索し、同様に追放された人々と行き会い、信念を通すためにぶつかったり、言葉を尽くして和解したりしながら、魔界と呼ばれる土地で、周りの世界と折り合ってゆく。
そこにはヒロイン(?)である聖女担当カモミールの純粋さというのか、澄んだ心根みたいなものに根差すものもあって、そうした「純粋無垢」な女の子がどうやって自分の信じるところを通すのかという、書き方を誤るとひどく扱い辛くいびつになりそうなものも綺麗に描き出しています。

スパっと言いきれないのがもどかしいのですが、そういうものの描き出しかたが、たまらなく好きな感じなのです。


純粋に異世界ファンタジーとしても描写力が高くしっかりしたお話なので、その点だけでも十分以上に楽しいと思います。魔法の詠唱? とか実にセンスがあってかっこいい。
そのうえで、ペルクスやカモミール、彼らを取り巻く、あるいは彼らと出会うひとびとの中に何かしら惹かれるものを感ぜられたなら、きっとそれ以上に本作の世界へのめり込めるはずです。

よろしければ、まず第一章を。
そこまででおよその方向性は見えると思いますので、是非に。

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