お手軽とはいうけれど、それでできるのは特別な時間

 私がひとこと紹介のように思うのは、この物語が宇宙を舞台にし、明言はされていませんが遠い未来なのだろうと感じたからでした。

 どこからどこへ行くのか? どれくらいの距離を移動しているのか? 宇宙船の大きさは? 作中で明かされていない事に思考が向いてしまうのは、この物語の核となる題材が、「缶入りのパン」と「柚子味噌」という私でも知っているものだからです。

 自分の知らない時代、知らない場所に出て来た、自分の知っているものが題名の「お手軽ランチタイム」と繋がると、知らないものの方にも意識が向いてしまいます。

 パン…粒あんという言葉が出てくるから、あんパンなのでしょうか? それに柚子味噌をつけて食べるだけ…確かにお手軽です。

 でも、宇宙を旅する時代を考えるとノスタルジックで、また宇宙船という閉じられた空間を考えると、このお手軽なランチがもたらす時間が、どれだけ貴重で、特別なものなのか…という想像力を刺激されます。

 2500字足らずの短編ですが、この物語は宇宙に匹敵する広さを持つ想像力という世界を刺激してくれます。