第157話 『スーパーロボット大戦』シリーズの話 その10

 私がスパロボに本格的に復帰するきっかけとなったのは、2008年にPS2ソフトとして発売された『スーパーロボット大戦Z』である。PS2末期の作品ながら、本作は50万本以上売り上げ、シリーズ化して続編がリリースされることとなる。

 本作ではディレクターとシナリオを担当した名倉なぐら正博まさひろのことも触れておきたい。スパロボαシリーズからディレクターや一部シナリオを担当して評価も高かったが、本作を皮切りに全5作品に渡るシリーズを執筆することになる。作品同士の大胆なクロスオーバーだけではなく、ネットミームや時事ネタなどのプレイヤー向けの小ネタも織り込む懐の広さでプレイヤーを唸らせた。ただし、『スーパーロボット大戦Z』では中盤の展開でプレイヤー賛否が分かれた部分がある。それを差し引いても、これまでのスパロボシナリオ執筆者としては最大の貢献者の一人だろう。


 本作の背景設定として使われているのは初参戦組の一作、『超時空世紀オーガス』の設定である「多元世界」である。「時空振動弾」によって様々な世界が混ざった「多元世界」という設定は、スパロボとの相性が抜群だった。オリジナルの男女主人公も、それぞれ別の世界から物語がスタートし、多元世界に巻き込まれていくこととなる。


 本作は初参戦作品の多さも特徴だった。2000年代の人気作品『オーバーマン キングゲイナー』『創聖のアクエリオン』『交響詩篇エウレカセブン』『超重神グラヴィオン』に加え、1980年代の作品である『超時空世紀オーガス』『宇宙戦士バルディオス』、そして安原義人がパイロットの一人、ジュリィ野口を演じる『宇宙大帝ゴッドシグマ』である。ちなみに、本作の発表イベントでは『宇宙大帝ゴッドシグマ』は他作品との版権表記と被るという理由でシークレット枠としてサプライズ発表された。


 私は『ゴッドシグマ』をリアルタイムで見てはいなかったが、衛星放送で再放送を見てはまり、本作発売の数年前に発売されたDVDBOXも購入した。クールで皮肉屋だが、熱い信念を隠し持つジュリィのキャラクターは安原義人の得意とするところで、スパロボでの再現も楽しみだった。

 しかし、パイロットの三人のうち、ジュリィの安原義人、自称キラケンこと吉良きら健作けんさく役の玄田哲章は健在だが、主人公、だん闘志也としや役の富山敬は故人だった。代役を打診された関智一は喜んで引き受けたと寺田プロデューサーは後に語っている。関智一は声真似では無く、雰囲気を似せるという路線で闘志也を見事に演じた。


 同じ問題は『宇宙戦士バルディオス』主人公マリンの声優、塩沢兼人にもあった。こちらは塩沢兼人の声に近く、代役経験のあった山崎かつみが当時の雰囲気そのままに演じた。『ゴッドシグマ』と『バルディオス』はゲーム本編でも密接にクロスオーバーすることとなる。


 ゲーム発売が近づくと、ゲーム雑誌で特集を組んだり、ゲーム店や家電量販店のゲームコーナーでスパロボのデモが流されるのが恒例になっていた。実際の敵との戦闘シーンがデモとして使われるので、ロボットの技の再現や声優の演技をいち早く見られる場だった。

 私も発売が待ちきれず、家電量販店まで映像を見に行った。ゴッドシグマの戦闘も見られたが、ジュリィの声が普段の安原義人の声と違っているように聞こえた。しかし、店頭デモでは台詞も少なく、私は実際にゲームをするまで判断を保留することにした。


 次回は発売日以降の話をしたい。

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