第23話 食事への招待
「すっかりごちそうになってしまった。料理も凄く美味かったです」
自分なりの礼儀でガレナはマチルにお礼を述べた。フランに進められ皿に取り分けてくれた為、結構な量を食べることになったガレナである。
とは言え料理は確かに美味しく満足出来る物だった。相手は公爵だが気兼ねしなくていいよう談笑混じりに食事が出来たのも良かっただろう。
「気に入って貰えてよかったわ。本当若い男の子がモリモリ食事を食べる姿は見ていて気持ちいいわね」
「はは、私も若いものには負けないつもりだが、やはり違うものだな」
フランの両親にそう言われ少し照れくさく思うガレナだ。
「本当はうちにもガレナ
「ガルシアという名前で私のお兄様なのです」
マチルに補足するようにフランが教えてくれた。なるほどとガレナが頷く。この食事の間でガレナとロイズ家の家族の距離はかなり縮まっていた。
故にこのような話も気軽にされるしガレナの呼び方も途中からガレナくん、と呼んでも? と確認された。
ガレナはむしろその方がいいと答えた為、今は普通に君付けで呼ばれている。
「騎士なんだな。申し訳ないがあまり詳しくなくて。だけど王国軍というからにはかなりの使い手なのだろうか」
「はは。確かに息子は団長という立場にある。とは言えガレナと比べてはな――」
フランの父親が子を思い出すような目で語る。
「ふむ、そこまでか――」
「勿論。当然だとも」
グラハムの答えに、やはり騎士団長ともなれば実力は自分と比べてしまうと数段上か――と、ガレナは判断した。
「さて、そろそろいい時間であるな。部屋は用意させたから泊まっていくといい」
「本当にいいのだろうか?」
「勿論ですよ。ガレナくん自分の家だと思ってくつろいでいってね」
「それなら部屋まで私が案内しますね」
こうして夕食を終えフランに案内され客室へと向かった。部屋にはガレナ一人で寝るには十分過ぎる程の大きさのベッドが置かれていた。
「案内ありがとう」
「いえ」
ガレナがお礼を言うと、フランはそのまま部屋で立っており沈黙が空間を支配した。
「――その、何というか」
「あ、ご、ごめんなさい。その、あ! そうだガレナの叔母様はどんな方なのですか?」
「叔母――ミネルバのことか」
「はい! そのミネルバ様のこと聞いてみたいです。いいですか?」
「そうだな――」
こうしてフランは暫く客室に留まり席についてガレナからミネルバの話を聞き続けた。
「――ミネルバについてはこんなところかな。俺にとっては親も同然の人だし今の俺があるのも叔母のおかげだ」
「そうなのですね。道先案内人の仕事もミネルバ様がきっかけだったと」
「あぁ、勿論それもあるが――山籠りしている時にある冒険者と知り合ってな」
ガレナはそのことについても簡単に話して聞かせる。
「あの強さは途中で知り合った冒険者のおかげでもあるのですね」
「あぁ。短い間ではあったが俺にとっては師と同じだ。そして追いかけるべき背中でもある」
同時に冒険者の凄まじさも師匠が教えてくれた、とガレナは考えてもいた。
「と、ついつい話し込んでしまった。もう眠いのではないか?」
「え? あ、確かにもうこんな時間。何かガレナと一緒だと凄く時間が早く感じますしそれが、その、勿体ないなって……」
「そ、そうか」
ガレナが照れくさそうに答えた。最後の方は声が細くなってしまい聞こえてなかったガレナだがなんとなく頬が赤くなるのを感じてもいた。
「それでは私も部屋に戻りますね。ガレナおやすみなさい」
「あぁおやすみフラン――」
そしてフランはガレナの部屋を出て寝室に向かう。
「――何か凄く胸がドキドキしてる」
一度はベッドに横になったものの寝付けず、フランはバルコニーに出て夜風に当たることにした。
「――男の人でこんな気持ちになったの初めてかも知れない……」
そうひとりごちるフラン。男性との出会いは多かった。公爵家の娘だ。社交界など貴族同士の集まりに参加する事も多い。
そうなれば当然フランに気に入られようと声を掛けてくる男もいる。
だがそういったグイグイ来る貴族の男性にフランは苦手意識を持っていた。話す内容もフランの容姿以外では自分の家について褒めたり探るように聞いてきたりといった様子が目立つ。
それが結果的に家ありきで声を掛けているようでありフレンにとっては好ましくなかった。
だが――ガレナは違った。ガレナはフランが公爵家の令嬢だと知っても媚びへつらったりせず普通の女の子として扱ってくれた。
それがフランは嬉しかった。しかもガレナはフラン側の無理難題を聞き入れてくれて危険な魔境を乗り切るための案内役も買ってくれた。
それに道中魔人が現れても決して怯むこと無く身を挺してフランを守ってくれた。
フランがガレナを意識するのもそういった背景があるからでありガレナはフランにとって物語で見たような理想の騎士そのものなのである――
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